第14章 特別な言葉
「はい。ずっと一緒にいたいです。ありがとう、ヴィクトル。ありがとう……」
泣いてしまったあなたは、すぐに立ち上がって抱きしめてくれたヴィクトルの胸の中にうずまる。
彼は喜びが爆発して笑顔なはずだが、ぎゅうっと抱擁されて見えなかった。
「俺もありがとう、名無しちゃん、嬉しいよ」
声がちょっと揺れてたので、彼ももらい泣きしてるのかと思った。
気になって見上げると、瞳が赤くなっている。
それを見て、あなたの緊張が少しほぐれて二人の笑みも溶け出した。
「ほんとに俺と結婚してくれる?」
「うん……! する! 結婚する!」
目尻の濡れた笑顔で頷くと、彼が抱き上げる勢いであなたをハグする。
気づくと、周りの何人かの観光客がこっちを見ていた。
二人はそれに気づき、慌てて見渡す。
「おめでとう〜」と言ってくれるカップルや、親指をぐっと立ててくれる老夫婦の姿が印象的だった。
「はは、完全に見られちゃった」
「ほんとだ。いや、ごめん。俺の想定と違う場所になっちゃって」
ヴィクトルはもう少し静かで風景が望める最適ポイントを見つけていたのだが、急遽ここでやるしかないと決めたようだった。
あなたはそれを聞いて、微笑みが止まない幸せな気分の中でこう伝えた。
「ありがとう、ヴィクトル。場所はどこでも嬉しいよ。家でも旅先でも道端でも。どんなタイミングでも嬉しい。だってヴィクトルの言葉だもん」
そう本音を伝えながらも、相当の準備をしてくれた彼に深く感謝をした。
このプロポーズは、彼が色んな思いの中で考えに考えぬいて出した答えだったのだ。
「そう言ってもらえて俺もすごく嬉しい。……ああ、ものすごく安心した。……夢じゃないよな」
彼は今更実感が湧いてきた様子で、あなたの両手を自分の指でまた包みこむ。
「あっ! すごく冷たい。ごめんね、早く中に入ろう!」
慌てた彼に連れられ、屋内の店が並ぶロッジに二人は向かった。