第14章 特別な言葉
やがてヴィクトルが指輪を取り、あなたの指にそっとはめてくれる。
それを見つめたあなたは、熱いため息を吐いて現実がようやく目の前に現れた気がした。
「ありがとう、ヴィクトル。こんなに素敵なもの……私がつけていいのかな? まだ早くない…? 言葉だけでも十分なのに」
「早くないよ。というか、俺が言葉も指輪も急いじゃっただけだからね。早く君に伝えたくてさ」
だから自分の勝手でしてしまったことなのだと彼は言う。
「ねえ。いつ結婚するの?」
「それは……俺はいつでも準備万端なんだけど、名無しちゃんのタイミングが大事だからね」
だから君の心の準備が出来たときに、そして環境が大丈夫なときに――そう彼は伝えてくれたが、あなたの性格上自分のタイミング中心になどとても出来ない。
彼自身や仕事などの状況をまず考えてしまうからだ。
そう思うこともヴィクトルはなんとなく分かっているため、こう言ってくれた。
「二人でまた一緒に考えよう。……本当はね、プロポーズするときも重くならないように、結婚を前提にお付き合いを続けてくださいって言うつもりだったんだ。……でもあの状況で、君を見つめていたら。考えもふっとんだし、とにかく心にある気持ちを全部伝えたくなった。だから結婚してほしいってストレートに言っちゃったんだ」
彼は照れくさそうに本音を話してくれた。
あなたはもっと感情を揺さぶられて、胸に抱きつく。
そしてぎゅっとハグをしたあと、彼の瞳を捉えた。
「すごく嬉しかった。ありがとう、ヴィクトル。これからもよろしくね。私もあなたのことを一生懸命支えるよ。死ぬまであなた一人を愛するからね」
「…………あっ、名無しちゃん」
こんな場所でそんな真剣に、熱く気持ちを返されると思わず、ヴィクトルはあなたに改めて惚れ込んでいく。
「うん。ありがとう。……まいったな。今の俺より良い求婚じゃなかったか?」
「ふふっ、そんなことないよ。二人ともよかったよ」
そうやってあなたが笑うと、彼はこの日一番気が抜けたみたいな、素直な柔らかい表情で笑い、頷いてくれた。