第14章 特別な言葉
「本当にいいの? いくらそういう習慣とはいえ私だけもらうのおかしいよね。……あっそうだ! じゃあ私もヴィクトルに婚約の証として何かあげるね」
緊張してペラペラ喋るが彼はあなたをにこにこと愛おしげに見つめている。
「ふふ、ありがとう。気持ちだけでも嬉しいけどな。あっそうだ、二人のペアのものはほしいね」
「それいい! 絶対買おうね!」
しっかり約束をして、いざ覚悟を決めて視線を箱の中に落とす。
普通の段取りとはかけ離れてしまったが、あなたの驚きはそんな事情を優に超えていった。
「うわ……すごい。綺麗……ダイヤが3つ輝いてる……」
銀色のリングに、大きすぎないがまばゆい輝きを放つ確かなダイヤモンドが、わずかな弧を描くように3つ並んでいる。
真ん中のだけ大きめで、間には繊細な細工があしらわれていて、デザインも可憐かつエレガントで愛らしい。
ヴィクトルがあなたに抱いている、柔らかでしなやかな、だけれど愛にあふれた優しさを表現した、ふさわしい婚約指輪だった。
「…………」
「名無しちゃん? それ、大丈夫? デザインとか石とか……」
「……えっ? あぁ! 素晴らしいに決まってるよ! ごめん、見とれちゃって、どう喜びを表現したらいいのか」
あなたは慌てて返事をし、でもまた引き込まれるように指輪を見つめた。
そしてもう一度じわりと瞳が濡れてくる。
するとヴィクトルがもう少し距離を詰めて、あなたの隣から優しく肩を抱いた。
店内なのに、近くに人がいないからか優しく顎を取り、唇にキスを重ねる。
「んっ! ヴィクトル…!」
「ごめんね。どうしても今したくなった」
彼があまりに自然に微笑むから、あなたも表情が緩んできて彼の肩口にそっと頭を預ける。
そうしてしばらく慣れ親しんだ温もりの中で、二人で過ごしていた。