第14章 特別な言葉
「ええとね、まだ違うんだ」
彼は子供相手にさっと照れた表情をしながら、優しい雰囲気をまとう。
「ふうん。頑張ったほうがいいよ」
「えっ。うん。そりゃ頑張るさ」
年の違う二人の会話にあなたは吹き出す。
たったそれだけだったが、少年はそわそわして立ち上がり、あなたに小さく手を振って去ろうとした。
「あっねえ! これもあげるね。ありがとう」
あなたはポシェットから小さい袋入りのチョコを手渡した。すると彼は高揚した笑みを見せ、素早く親のもとに帰っていった。
また二人になったあと、ヴィクトルと気恥ずかしげに見つめ合う。
「なんかさ、彼に全部持ってかれたな」
「ええっ? そんなことないよ。はいっ、ヴィクトルにもあげるね」
「ありがとう」
彼にも菓子を渡すと、その場で中身を開けてボリボリ食べていた。
あなたはその様子を楽しそうに眺め、再びにこやかな夫婦と目が合ったため微笑み、なんだか朗らかな気分でその場を終えた。
ロープウェーから降りると、ぴりっとした冷気が喉まで入ってくる。
「わぁ〜着いたぁ」
あなたはさっきまでの恐怖がどこへやら、腕を広げて息を吸い込み、遠くの眺望を見やった。
二人で人混みに紛れ、展望台まで歩いていく。
「名無しちゃん、もう大丈夫?」
「うんっ。ごめんね、急にパニックになっちゃって」
「いいや、気づかなくてごめん。ここに連れてくるべきじゃなかったよな」
彼はかなり反省した様子で言ってくれたが、まったく違うとあなたは主張する。
そこまで怖いと乗るまで知らなかった自分のせいなのだ。
彼はそれでも気にしていたが、帰りもそばにいるからねと寄り添ってくれて、それだけであなたはありがたくて心強かった。
それにあのイレギュラーな少年である。
彼の何気ない台詞のおかげで、ヴィクトルの口からあんな言葉が聞けるなんて。
現金だけれど、その嬉しさによって恐怖もほとんど忘れるほどだった。
「ヴィクトルはああやってちゃんと声かけられて凄いなぁ。私も見習わなきゃ。それにしても面白い男の子だったね」
「ああ、あいつ帰りはいないよな」
周りを大げさに伺う彼が異様に可笑しかった。
昨日と今日だけでも、またヴィクトルの色んな面を見れたことがすごく嬉しく感じる。