第13章 誕生日編
あなたが部屋から出てくると、ヴィクトルはなぜか冷蔵庫の前にいた。
ここはキッチンも備わっていて、長期滞在の人は冬ごもり的な生活もできる。
本当に明日帰ってしまうのがもったいないぐらいの場所だと感じながら、あなたは彼の背中に抱きついた。
「ヴィクトル、何してるの?」
レストランから二人きりのバンガローに帰ってきて、緊張が少しほぐれ大胆になっている。
「うわっ」
彼はびっくりして振り向く。
そして表情を柔らかくし、すぐに腕の中に体を包み込んでくれた。
彼の背にある冷蔵庫の扉が自然に閉じられる。
「どうしたの名無しちゃん。なんだか元気だな」
「うんっ。そうだよ。本当に可愛いね、このネックレス。ずっと鏡見ちゃうよ。毎日つけるね」
寝るまでつけようと決めていると、彼の目元も細められる。
「そう言ってくれて嬉しいな。君の好きな時につけてね。俺も見てるだけですごく幸せな気分になる、一緒にいるみたいでさ」
彼の指先がそっとチェーンに伸びてきて、優しくなぞってきたため赤い顔で動かないように努めた。
「うんっ、ほんとにその通り。そういえば、どうしてここにいるの?」
何気なく何をしてたのか尋ねると、彼は緊張した面持ちで答えた。
「えっと、うん。ちょっとね――。いや、よし。やるか」
覚悟を決めたヴィクトルが笑顔を見せてこう言った。
「そうだ名無しちゃん、ケーキ食べる?」
「ケーキ? もちろん食べる!」
あなたは瞳を輝かせて返事をした。
彼の誕生日プランはこれで終わりではなく、今日はなんとケーキまで用意してくれていたのだ。
もう幸福ですでに満腹になりそうだが、あなたはこの瞬間もとっても楽しみにしていた。
彼のそばにくっついていると、ヴィクトルは慎重に冷蔵庫からケーキの箱を取り出した。
二人にしては大きいホールサイズだが、そのままリビングのローテーブルに置かれてわくわくする。
「じゃあ名無しちゃん、お誕生日おめでとう!」
そう言って開けてもらい、中のケーキを見た瞬間にあなたはまた大きな感動に包まれる。
美味しそうな生クリームと黄色いリキュールに彩られた鮮やかなケーキは、二人の郷土でも有名なものだ。