第12章 語り合い
ヴィクトルはその日会社が終わった後、社長のフロリアンと行きつけのバーにいた。
二人はカウンター前に並び、マスターから酒を受け取って久々に話し込んでいる。
両者とも整えられた髪型に上質なスーツをまとい、スタイルの良い筋肉質な体型だ。
とくにフロリアンはヴィクトルとは対照的な短くまばゆい金髪で、精悍な顔立ちにキリリとした眉が力強い印象を与える。
二人は美しい革靴のつま先まで洗練されたビジネスマンそのものだが、一度喋り出すと企業幹部としての鎧いは取れ、高校時代の屈託のない表情さえ現れる。
「そうか、うまくいってるんだな。そのとても可愛らしい年下の彼女とは」
フロリアンが蒸留酒のグラスをカウンターに置き、親友に尋ねた。
するとヴィクトルは眉を思わせぶりに上げて、上機嫌に頷く。
「ああ、順調だよ。今月は彼女との予定が詰まっていて、今から子供のように楽しみで夜も眠れないくらいだ」
「はははっ。お前の最近の表情を見てればわかる。明らかに半年前とは大違いだ。……うん、一体どんな子なんだろうな。早く会わせてくれよ」
「写真なら見ただろう」
「そうだが、やっぱり実物に会ってみないことにはなんとも言えないだろ?」
親友は少ししかめっ面だ。落ち着かない様子で太い腕まで組み始める。
恋愛する二人に対して反対する意思があるのではない。ただ思うところもある。
「二十歳下の子か」
「もうすぐ十八歳差だ」
ヴィクトルは気づかれないくらいのため息を吐いた。
「お前も俺の親父のようなことを言うのかよ。まあ分かるけどな」
「分かるだろう? お前は理性的で法に触れるようなことは決してしないやつだ。見た目はチャラついているが、俺たちメンバーの中でも当時から一番真面目なやつだった」
ヴィクトルは正面に向けていた体を隣にくるりと合わせた。
「何が言いたいんだよ」
「だからな。俺は双子の女の子が生まれて最近思うんだ。もし今二十歳のやつが将来俺の娘に近づいてきたら――」
「ああやめてくれ」
「いや、分かってるぞ。全く無駄な考えだとな。大人同士ならば何も問題はない。親が強く反対さえしていなければな」
隣ではヴィクトルがそのままのポーズで辛抱強く耳を傾けている。