第11章 一大事編
相変わらず背をそっと抱いているヴィクトルの温もりにドキドキしていると、彼はあなたに微笑んだ。
「じゃあそろそろ行こう。俺達はデートの続きがあるんでね。君達も良い一日を。気をつけて帰るんだよ」
まるで先生のような言い草に女性達は呆れ笑いをしていたが、あなたの手を引いたヴィクトルは店から出ていこうとした。
あなたも会釈をして続こうとすると、後ろから年長の女性に声をかけられる。
「あっヴィクトル、絶対彼女もクリスマス会に連れてきてくださいよ。名無しさん、一緒にまたおしゃべりしましょうね。 私たち別に全然怖くないからね!」
「そうそう。絶対楽しい会ですよ〜。身内なら誰でも来て大丈夫ですし、また会いましょうね〜」
大人の女性二人はそう賑やかに、ワクワクした顔つきで手を振ってくれた。
あなたはびっくりしたが、明言を避けつつも挨拶をしてにこやかに手を振り返した。
ついでにまた、ちらっとあの例の女の人を見た。彼女だけは張りついた笑みのまま無言だった。
「ああ、はいはい。クリスマスは2人でゆっくり過ごすから、時間があったらね」
ヴィクトルは変わらずそう言い残し、爽やかに店を後にした。
通りを歩いている間もあなたの心臓はしばらく落ち着かなかったが、彼の手に包まれて少し安心感が戻ってくる。
「……ま、まさか会社の人に会っちゃうなんて、びっくりしたね」
「ああ、本当だよね。ごめんね。急に圧迫感があったでしょう」
彼が苦笑いして、あなたに謝るとあなたはそんなことないと言う。
「優しそうな人たちだったよ。やっぱりヴィクトルの同僚の人ってみんなフレンドリーだな〜」
脳裏にあの女性の冷たい表情が浮かんでいたが、かき消すようにそう言った。実際にその印象も持ったためだ。