第11章 一大事編
その後、ヴィクトルはちょっと電話するねと言って席を立った。
あなたはその間キッチンで家事をして待つ。
しばらくしてリビングに戻ると、彼は母親との電話を終えていた。
「どうだった?」
「うん。話したんだけど、すごくお袋も喜んでたよ。もの凄く君のことずっと可愛いとか、優しくていい子とか、舞い上がってたな。まあその通りなんだけどね。思いやりがある素敵な女性だって」
「ええ〜っ! そんな、ないないない! 恥ずかしいよ、すっごい嬉しいけど!」
あなたは褒められすぎて真っ赤になって否定したが、頭の片隅でバレてない⋯とドキドキしていた。
ヴィクトルもにこやかに腕を組んでいる。
「俺も嬉しいよ。でもなんかさ、俺にやけに優しかったんだけど、あれは何なんだ?」
「えっ。はは、なんだろう。いきなり来ちゃったからじゃないかな。気にしてたし」
自然にごまかそうとするが、彼女が状況を察して言わないでいてくれたことに、ひとまず感謝した。
きっとこの話題は二人に任せてくれたのだろうと思う。
それから二人は丸型の囲みソファに移動し、話を続けた。
「ヴィクトルのことも褒めてたよ。とってもいい子って」
「⋯⋯えっ? 君にそういう風に言われると、照れるな」
彼は体をこちらに傾けて、甘い眼差しを向けてくる。もう母親のことよりあなたに集中しているようだ。
醸し出される雰囲気にじりじりしていると、ヴィクトルがふっと笑った。
「いつもは俺のことをやたらとディスってくるんだよ」
「そうなの? どうして?」
砕けた表現に笑いそうになったが、彼も軽く肩をすくめている。
「俺が調子に乗らないためらしい」
「ふふっ。面白いお母さんだねぇ」
そうか。だから彼はこれほど完璧なのに謙虚なのかな。
ヴィクトルもそんな日常に慣れている様子で、ある意味親しい親子関係がうかがえて微笑ましくなった。