第11章 一大事編
あなたはここぞとばかりに、一番伝えたかったことを力強く伝えた。
「こちらこそよろしくね。ヴィクトルのことも。⋯⋯あっそうだ、あと一番このこと夫婦で心配してて。名無しちゃんのご家族は大丈夫かしら」
「あっ! 全然大丈夫ですから、うちは気にしないでください。少なくとも母は応援してくれてるというか、彼に会ってみたいと言ってるので」
「本当? それは良かったわ。あの子にもちゃんとしなさいよって言っておかないと」
彼女もほっと笑みを見せてくれたので安心する。その後も二人の会話は途切れなかった。
もっともっと話したかったけれど、気づけば時間が結構経っていたので、クレアもお邪魔しちゃったと申し訳なさそうに立ち上がる。
あなたは名残惜しく彼女を玄関先まで見送った。
「急に来ちゃったのにおもてなししてくれてありがとうね。会えてよかったわ。また是非お茶したりお食事でもしましょうね」
「 はい、もちろんです。 次はロベルトさんもぜひ一緒に、四人でお会いできたら嬉しいです」
そう言ってあなたは微笑んだが、すぐに口を滑らせたかと焦った。
そういえば二人は別居中なのだ。しかし、会話中もクレアは何度か夫のことを口にしていたし、そこまでこじれてないような印象もあった。
彼女もにこやかに、そうしましょうと言ってくれたので少し胸を撫で下ろす。
こうして驚きの出会いはひとまず幕を閉じた。
その後もあなたはマンションの玄関先でひとり興奮冷めやらず、浮足立っていた。
彼になんて話そう。どういう反応をするだろう。
勝手に会ってしまって、やっぱり複雑だろうか。
そう心配は尽きなかったが。
「ふふっ。⋯⋯嬉しいなぁ。今日の出来事も。ヴィクトルの気持ちも」
それ以上に彼の思いを知ったことに、あなたは今までにない大きな幸福が全身を駆け巡っていた。