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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第11章 一大事編


女の子一人で育てられたあなたとはだいぶ違う環境に、びっくりする。彼の今のイメージからは想像できないが、思ったよりやんちゃな男子だったのだろうか。

スポーツも得意だし、もともと体も強い方なのだろう。
たまに風邪を引くことがあっても、そんな姿はどこか意外で、むしろ人間らしささえ感じる。

彼はきっと小さい頃から、自分で立ち上がることを覚えてきたのかもしれない。

こうやってまた新しい一面を知れたなと、あなたは心の中でひとり頷いていた。




ヴィクトルが風呂から出たあとは、食卓で夕食を取り、そのまま話もした。

彼はあなたの大きな鞄が目に入ったようで、少しそわそわした様子だ。

「名無しちゃん、もしかして⋯⋯明日も泊まる? 金曜だけど」
「そうしてもいい? 長過ぎる?」
「いいや全然、やった!」

彼にしては珍しく、舞い上がって喜んでいる。
まるで試合で勝利したときのような表情だ。あなたは照れながらも、ほわっと嬉しい気持ちが募った。

「へへ。よかったぁ。もちろん心配なのはあったけど、やっぱり長く一緒にいたいもんね」
「⋯⋯俺もさ、もちろん」

彼が正面から手を伸ばし、あなたの手の甲に重ねる。
どきりとしたが、その黒い瞳を見つめ返すと、なぜか曇り始めた。

「あのね、そうなんだけど実は、土曜日急に仕事が入っちゃったんだ」
「え! 大丈夫? 私、帰ったほうがいいかな?」
「いやいや、もしよかったらいてほしいよ。でもつまらないよね、本当に申し訳ない」

彼に残念そうに謝られるけれど、そんな必要は全然なかった。むしろ違うことが頭をよぎる。

「もしかして、ヴィクトルが取ってくれた誕生日の休みのせいで、仕事が立て込んじゃってるとか? どうしよう、迷惑が――」
「違うよ、それはまったく心配ないことなんだ。海外の取引先の都合でね、その日しか会議が出来なくて。急遽決まったことだからね」

やんわりと気遣うように伝えられて、ひとまずほっと胸をなで下ろした。

「それに君の誕生日は、一番大事な日だよ。俺にとって何よりも優先することだから」

にこりとした微笑みを前に、顔が火照ってしまう。そんなことを誰かに言われたことがない。
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