第11章 一大事編
馬鹿だ⋯⋯変な態度を取ってしまった。
嬉しいはずなのに、そういう話題にどう反応をすればいいのか分からなくなってしまった。
自分は少なからず、彼との将来に期待している部分があったからだ。
ブティックでの勤務は、今日は二人だったため裏方に回り在庫整理をしていた。
その間も一人で悶々と考える。
あなたは勝手に、ヴィクトルには結婚願望はないんじゃないかと思っていた。
今年40歳になった大人の男性で、仕事のできる経営コンサルタントだ。これまで独身だったし、この先も独身でいたいのではないかと。
前にずっとそばにいてくれると約束してくれて、本当に嬉しく、心から信じてもいる。
二人の愛がつづく限り、ヴィクトルは誠実に一途にそばにいて、恋人を大切にしてくれる素晴らしい人だと。
そのことに疑いはなかった。
まだ若い娘で、経験もそんなにない自分の甘い考えかもしれないけれど。
「はあ⋯⋯なんで多くを望んじゃうんだろうな。人の考えなんて、それぞれ違うのに」
昨日の言葉は、もしかしたら彼の潜在意識の言葉かも。
それだけであなたは嬉しくもなり、幸せにもなる。
このまま何年も付き合って、別にゴールが婚姻を結ぶことじゃなくたっていいのだ。
そもそも、彼に比べて未熟な自分が結婚したいと思えるような人物であるかということすら、疑問だった。
「もう余計なこと考えるのやめよう。悩むのは早すぎる問題だよね」
つい自信のない性格が戻ってきて、まだ問題にもなってない事柄について勝手に悩んでいる。
あなたは頭を振って、今日帰宅したらまたヴィクトルに会える、そのことを考えていったんすべて忘れようとした。