第11章 一大事編
「こうやって見送れるのも、嬉しいなぁ。また一緒に暮らしたら、ありえることだよね」
「⋯⋯そっ、そ、そうっ⋯⋯だよねっ」
あなたはまた顔が熱くなり、なんだか過剰に反応してしまった。しかも次の言葉が出てこない。
不自然に黙ったあなたを見て、ヴィクトルが「ん?」という顔をする。
「あ、いや。プレッシャーをかけるつもりじゃないんだよ、ごめん」
「ううんっ。全然分かってるし! こっちこそごめんっ」
顔を勢いよく振りながら、あなたの頭の中で、昨日の彼の言葉が反芻する。
熱にうなされたみたいに、言っていた言葉。
あなただけに向けて。
だけれど、それは夢の中の言葉だ。
現実ではない。
「じゃあ行ってきます!」
「あ⋯うん! ねえ、ちゃんと帰ってきてくれよ、名無しちゃん!」
「もちろんだよ!」
あなたは足早に逃げるように、彼に振り返って手を振ることもせず、マンションの静かな廊下を進みエレベーターに乗った。