第11章 一大事編
「名無しちゃん、そんなに近くにいたら⋯⋯移る⋯⋯」
「もう。まだ言ってるの? もう移っちゃったよーだ」
「⋯⋯意地悪だな、君は⋯⋯」
そんなふうに言われてふっと笑いがもれた。言い返せるなら大丈夫だろうと、彼に少し休んでもらうため腰を浮かす。
寝室には備え付けのバスルームがすぐそばにあるし、彼も大丈夫だと言ったから少しの間またキッチンに行った。
今は何も食べられないだろうけど、飲み物に加えてスープも用意しておこう。
冷蔵庫には野菜もあったし十分だ。彼は多忙なのに時折自炊していて、本当に尊敬する。
風邪のときの定番の、野菜のチキンスープを作り、こっそりと寝室へ戻った。
静かに確認すると、彼は寝息を立てて眠っていた。
顔色はさっきよりも良い。色々触って確かめたくなるのをこらえ、あなたはそばの一人がけソファに座って見守ることにした。
時刻はもうすぐ夜十時で、あなたは彼に明日の仕事を休んでもらいたいと願う。
どのみち自分はここに泊まり、朝まで一緒にいるつもりだ。
色々考えていたら、うとうとしてソファ椅子で眠ってしまった。
「⋯⋯あっ、やばっ」
あなたは瞬きをするが、彼はまだ眠っている。
もう二時間近く経っていた。愚かすぎる。何かあったらどうするの、そう自分を責めたが、あることに気づいた。
自分の胸元までブランケットがかかっていたのだ。
まさか一度起きた彼がやったのかな?
胸がじんと熱くなり凝視するけれど、聞くすべはなかった。
でも、起き上がって用を足すことも出来たみたいだし、よかった。
そう考えて、あなたは彼のベッドで一緒に眠ることにした。
十分に大きく、二人でも余るぐらいの広さだ。
自分も着替えて就寝の準備をし、邪魔しないように端で丸まった。