第11章 一大事編
「ヴィクトルの馬鹿っ!! そんなの今気にしないで、私はあなたのそばにいるよ、一番大事な人なんだからねっ!」
怒りながらベッド脇にひざまずき、彼の上半身に負荷をかけないように抱擁する。
彼は言葉を失い、もう何も返せないようだった。
あなたははっとなって顔をあげる。
「大きな声出してごめんね、痛かったっ? とにかく、今は休まなきゃだめだよ、そうだ、お腹は壊してない? 気持ち悪くない?」
彼はぼうっとして、潤んだ黒い瞳で微かに首を振る。
あなたは胸を撫で下ろし、彼の額に張りついた黒髪をそっとといた。
「よかった。大丈夫、きっと風邪だよ。待っててね、準備するから」
あなたは立ち上がり、彼に微笑みかけて部屋を出た。
弱ってる彼に強く言ってしまったことを反省しながら、キッチンでお湯を出し、はちみつと塩をまぜてドリンクを作る。
前にあなたが指を切ってしまったときに、彼が奥の棚の引き出しから消毒液や絆創膏を出してくれたのを覚えていて、そこを見ると体温計もあった。
一人暮らしなのにちゃんと必要なものを揃えている彼をすごいと思う。
寝室に戻ると、ヴィクトルは横になっていたが、体を少し起こしてくれ、水分を取った。
合間に体温計を額に当てると、一瞬で体温が三十八度五分と出る。思ったよりも低く安心はしたが、これから上がるかもしれない。
「ヴィクトル、服着替えようか。これで大丈夫?」
「⋯⋯うん、ありがとう⋯⋯あぁ、自分で出来るよ⋯⋯」
彼はあまり人に世話されることに慣れてないようだ。元々屈強なスポーツマンだし、恥ずかしさもあるのかも。
でも今は手伝わせてほしいと、あなたはゆっくり彼の服を脱がせ、汗を拭いて薄着の上下を着せた。
そうして水分を補給し、布団の中に入ったヴィクトルは、少し表情が和らいでいた。
あなたはそばの床に膝立ちをし、タオルで髪を拭いながら、愛おしい思いで見つめる。