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美オヤジを誘って囲われて救われる話

第11章 一大事編


彼のマンションへ着き、大理石のロビーを抜けて最上階へ向かった。
互いの合鍵を渡し合っていたため、玄関のドアを開けて入るが、使うのは初めてだ。

「⋯⋯いるの? ヴィクトル⋯⋯?」

廊下の明かりが自動でつき、広いリビングまで歩いていく。部屋は真っ暗で、床に彼の鞄が落ち、スーツの上着が脱ぎ捨てられていた。

あなたの鼓動が鳴っていく。
明らかに様子が変だ。しかし室内は物音ひとつせず、がらんと静寂に満ちていた。

彼の寝室の前で足を止め、覚悟を決めて扉を開いた。

すると、眼前には信じられない光景が広がっていた。

「⋯⋯ヴィクトル!? どうしたの!」

彼は大きなベッドの上で、うつぶせになって倒れていた。
あなたは青ざめて駆け寄り、彼の様子を確かめた。

帰宅して直行したのか、ネクタイは外していたがワイシャツとズボンはそのままだ。

「大丈夫! ねえ!」

彼は浅く息を吐きながら、ゆっくり寝返りを打とうとする。だが苦しそうな顔には汗がにじみ、とても赤らんでいた。

「ん⋯⋯名無しちゃん⋯⋯どうして⋯⋯」

あなたが急いで彼の頬と額に手を当てると、高熱が出ていた。
すぐに事態を把握し、パニックを抑えながら彼に声をかける。

「ヴィクトル、具合が悪かったんだね、大丈夫だよ、私が来たからね!」

きっと彼は変な気を使って、こんなに自分が苦しんでいる中で、あんなメールを送ったのだと知る。

あなたはよからぬ事を考えてしまったことを瞬間的に恥じたが、同時にすぐに彼の看病をしなければと考えた。

「ええと、体温計どこだろう、あっ、待ってお水飲んだ? 持ってくるね!」

リビングで必要なものを探そうと出ていこうとすると、彼はあなたの手首を驚くほどがっしりと握った。

振り返ると、つらそうにするヴィクトルが口を動かす。

「帰って⋯⋯君に移したくない⋯⋯」
「⋯⋯え!? 何言ってるの、帰るわけないでしょう、こんな状態なのにっ」
「でも、だめだ⋯⋯君は、お客さんに接する仕事で⋯⋯俺のそばに⋯⋯いないほうがいい」

そんな言葉を聞き、あなたは滅多にあることではないものの、カチンときてしまった。
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