第11章 一大事編
勤務が終わり、電車で自宅へ向かった。
今日は平日の水曜日で、いつもの習慣でヴィクトルに仕事が終わったことを伝え、彼にも気をつけてねとメールした。
彼はつい最近、手掛けていたプロジェクトが成功に終わり、今日はその祝いを皆でするのだと聞いていた。
きっと楽しくお酒も飲んでるだろうし、盛大にお祝いしてほしいとあなたも嬉しくなりながら考えていた。
しかし、しばらくして返ってきたヴィクトルからの返事は、奇妙だった。
駅から歩いてアパートへ着き、一息いれてからスマホを見ると。
『ごめん、しばらく会えない。俺は大丈夫。家に来ちゃだめだよ』
そう書かれていた。
あなたは目を疑い、しばし画面を食い入るように見つめながら固まってしまった。
「⋯⋯⋯⋯え? なにこれ。どういうこと⋯⋯? なんかおかしい⋯⋯よね?」
一瞬頭が真っ白になったが、ひとつずつ考えた。
しばらく会えないのはどうしてだろう?
仕事で何かあったのだろうか。ヴィクトルは大丈夫だと言ってるのは、どういう意味?心配いらないってこと?
どうして家に来ちゃだめなの?
ぐるぐる思考が回りながら、今日のイリスとの会話を思い出し、まさか――自分のことがいきなり嫌になった?――とまで考えてしまった。
「違うよね、考えすぎだよね。⋯⋯でも家に来るなって、なんでなの⋯?」
いてもたってもいられず、すぐに電話をした。
しかし彼は出なかった。
まだ仕事なのかもしれないが、お祝いの最中で、家で皆と飲んでいるのだろうか。それとも見知らぬ女性を呼んでるとか?
「違う違う⋯⋯そんなわけないよ。だってヴィクトルは誠実な人だもん! ⋯⋯けど、どうして電話に出ないんだろう⋯?」
自分はしつこい恋人にはなりたくない。
でもこれは何かが裏で起きていると感じた。
だからあなたは、来るなと言われたけれど、すぐに彼の家へ向かうことにした。
彼のことが、二人の行く末が、心配でたまらなくなっていた。