第10章 彼の同僚
アパートへ帰ってからも幸せな気分は継続していた。クリスマスに誕生日、彼との約束が目白押しで顔がにやける。
「お風呂ありがとう。さっぱりしたな」
「よかったー」
食事を済ませたあと、湯上がりの彼が黒髪をタオルで拭ってそばへ来る。
あなたが選んだゆるい黒とグレイの部屋着姿は、妙に色気を放っていてドキドキする。
自宅アパートに彼の私物が増えることも、くつろいでもらえてることも嬉しかった。
「ふう」
彼がソファであなたの隣に座ると、ふわっといい香りがした。
この前贈った爽やかな香水だ。あなたはいっそう癒やされて、彼の腕に嬉しそうに巻きついた。
「この時間が一番幸せだなぁ。ヴィクトルを独り占めできるね」
「ふふ、可愛いなぁ。いくらでも君にあげるよ、こんな俺なんて」
一見謙遜しすぎな言葉でも、艷っぽい眼差し付きだと自信しか感じないのはなぜだろう。
赤らんで黙ってしまうあなたの頬を、ヴィクトルは親指で愛おしそうに撫でる。
「名無しちゃんは家にいるとき、もっと甘えてくれるね」
「⋯⋯そう? 前にも言ってたね。外でも甘えてほしいの?」
「うん」
ストレートな返事に鼓動が跳ねる。
彼はにこっと笑って唇を近づけてきた。キスをされて早くもとろけそうになる。
外でもイチャつきたいんだ⋯⋯。今日は彼の意外な一面の連続で、ゆであがりっぱなしだ。
「じゃあ頑張るね」
「ははっ。無理しないでね。ほんのちょびっとでも大丈夫だよ」
「どんなこと?」
「君からキスしてくれるとか」
至近距離でとんでもないことを言われて、あなたは「全然ちょっとじゃないよ〜」と真っ赤になった。するとまた彼の気持ちいい笑い声が響く。
「ごめんごめん、半分冗談だから――」
でも言われたことは嬉しくて、まだ笑っている彼の唇を見つめ、ちゅっとキスをしてあげた。
すると彼は一瞬黙り、スイッチが入ったかのように、あなたを抱き寄せて腕に閉じ込め、本格的な甘いモードに誘ってくる。
「んんっ」
「名無しちゃん⋯⋯」
熱い唇が触れ、密着が深まっていくとあなたは焦り出した。