第10章 彼の同僚
「え? なに?」
「俺達のクリスマスだよ。俺は君に会いたいな」
「⋯⋯う、うん! 私もだよ!」
あなたは顔がぱあっと明るくなり、もちろん忘れてないとはしゃぎ始める。そんな様子が伝わり、彼の表情もほころんだ。
「あとね。もっともっと、大事なこともあるんだけどな」
彼がよりいっそう優しい顔になったので、あなたはじわりと思い出してくる。
「もしかして⋯」
「そうだよ。君の誕生日。それももしよかったら⋯⋯俺が一緒に過ごせる日ある?」
それはこの日一番の衝撃と嬉しさが爆発するメッセージで、あなたは有無を言わさず頷いた。
「もちろんだよ! 私もヴィクトルの時間さえあれば、一緒にいたい!」
彼の表情が輝き、すぐさま抱きしめられる。互いに熱い抱擁をかわし、想いがより強固に繋がって幸福感が募った。
誕生日はこの国では一年の行事の中でも大事なイベントだ。家族で集まり、知り合いを招く人も多い。
実家は離れてるし、社会人になってからはもう何年も当日に祝うことはしていないが、家族の誕生日付近にはいつも帰っている。
けれどそういうことを差し置いても、あなたにとって恋人のヴィクトルと過ごすことは、もっとも大切な当然の願いであった。
「はぁ嬉しい⋯⋯。でも確か来月のその日、平日なんだよね。ヴィクトルは仕事が――」
「ああ大丈夫。もう休み取ったから」
「うそ!!」
「本当だよ。二日取ってるんだ」
「そうなの? じゃあ私も取る!」
「ほんとう? 大丈夫?」
あなたは感激と感謝に震えながら、固く頷いた。
彼がそこまで準備をしてくれていたとは、まったく知る由もなかった。
誕生日に本人が有給を取るのは珍しくない。むしろ皆やっていることだ。
普段の働き方からしても、今から願い出れば可能なはずである。
店主である母の友人の女性に話してみよう。
「へへ。まさかこんな話になるとは⋯」
「そうだね。まあ今日伝えてみるつもりだったんだけど、色々約束が増えて嬉しいなぁ。さっきまでの心労が嘘みたいだ」
自虐的に話すヴィクトルに笑ってしまいながらも、彼はとても幸せそうで、それを見てるだけで自分も最高の気分に包まれた。
「じゃあお家帰ろっか」
あなたはなんだか清々しい気持ちで自分のアパートへ向かった。