第10章 彼の同僚
車の中に着くと、出発する前に少し二人で話をした。助手席に座るヴィクトルは珍しいが、こちらに大柄な体躯を向けてあなたを愛おしそうに見つめている。
「あぁ、君と二人きりになれてやっと落ち着いたな」
「本当? ふふ、よかった」
さっきの新鮮な彼の姿も胸が高鳴ったけれど、狭い空間で向き合うとドキドキする。
けれどあなたは、ひとつ気になっていることがあった。
「あの、ヴィクトルは近い同僚の人に私達のこと話したの⋯?」
それはこれまでデリケートな話題だと思っていたから、遠慮がちに聞いてみた。
すると彼は肩をすくめて不本意そうに明かす。
「いや言ってない。バレちゃったんだよ」
「そ、そっか。⋯⋯やっぱり、会社の人に見つかったら面倒だよね?」
そう尋ねたあなたの反応はヴィクトルにはまったく予期してなかったものらしく、彼は瞳を見開き、慌てて身を乗り出した。
「いや違う違う! ごめんね、今の態度はよくなかったな。まったくそうじゃないんだ。俺は信用できる奴には全員言いたいよ、俺達のこと。そこ絶対に誤解しないでね。ただ君と二人の関係を守りたかっただけだから」
目を見て伝えられ、力が抜けてきて安心する。
そもそもこの問題に対する二人の思惑はすれ違っていたようで、ヴィクトルの懸念こそあなたと完全に異なるところにあったのだ。