第10章 彼の同僚
「よし! じゃあキリのいいとこで、この四人で飲み行くか? お近づきの印に」
「あのな⋯⋯俺はこれから彼女とゆっくり週末を過ごすんだよ。邪魔するな」
「冗談だろ切れんなよ。あー早くこいつの面白い姿を皆に見せてえ」
ウケながらからかう友にヴィクトルは疲れ果て、そろそろあなたの手を握って立ち去ろうとした。
「じゃあな二人とも。クリス、こいつを頼んだぞ」
「ええっ、僕ですか? 仕方ないですね。ではお詫びをこめて。行きましょうかマックス。名無しさんも、良い週末を!」
「はい! 皆さんも楽しんでくださいね」
あなたは会釈して、楽しげに去っていくスーツの二人に手を振り返した。
そうしてようやく、オフィス街の一点に静けさが戻ってくる。
ちょっと迎えに来ただけのつもりが、すごい場になってしまったと興奮が冷めやらない。
でもヴィクトルはかなりバツが悪そうだ。
「ごめんね⋯⋯変な奴らに巻き込んで。怖くなかったかい?」
「ううん、全然。面白かったよ。でもヴィクトルが来てくれてもっと嬉しかった。ちょびっと緊張してたから」
素直に伝えて笑いかけると、また彼の長い腕にしまわれる。今度はさらに想いがこもった抱擁で、頭ごと包みこまれた。
「ヴィクトル⋯! まだ会社の前だよっ」
「そうだね。でも抑えがきかないよ。君がたまらなく可愛くてさ」
しみじみと言う彼にしばらくあなたは捕まり、背中を撫でていたのだった。