第10章 彼の同僚
「邪魔って、そんなことないって。真面目だなぁ名無しちゃんって。なぁクリス。この二人が付き合っていると想像するとなんだか面白くないか?」
「うわぁ、勝手に愛称で呼ぶのよくないですよ。ヴィクトルに怒られますよ。ごめんなさい名無しさん。彼は生まれつき馴れ馴れしい人なんです、だからこそ営業のトップなんですけどね」
「は、はあ。すごいなぁ」
「とにかく! こうして年若い女性をいい年した男の僕達が取り囲むのは健全ではありません。解放して差し上げましょうマックス」
「うるせえなぁ、お前が邪魔しに来たんだろうが。俺はちょっと彼女とお知り合いになろうと思っただけでなぁ」
年の違う同僚の二人が仲良さそうに話しているのをあなたは新鮮な思いで見つめる。前にヴィクトルも言っていたが、創業15年の会社で起業したメンバーは友人同士なため、そこまで堅苦しさをもたない社風の、雰囲気の良い職場なのだと想像できた。
「あのお二人とも、もうお仕事は終わりなんですか?」
「ええ、そうですよ。あっそうだ最後にこれだけ。名無しさん、我が社のクリスマス会に来ませんか? もちろんヴィクトルのパートナーとして」
「ええっ!?」
あなたは素で驚きおののいた。マックスもクリスも、それがいいという前向きな面持ちで佇んでいる。
「いやいや、無理ですよ! お邪魔ですし! 私部外者なので!」
「まったく部外者ではありませんよ。配偶者やパートナーがいる社員は連れてくるのがごく普通です。もちろん自由ですし一人で来られる方もいますが。そんな盛大すぎるものではなく、社内でシェフを呼んで気軽に立食するぐらいです。美味しいものやお酒がたくさん出ますよ〜社員もいつも特別メニューやケーキをプレゼントで帰りにもらえるので楽しみにしてるんです」
彼は笑顔であなたを誘い、とくに若い女子だからか食べ物で釣ろうとしてるらしかった。
きっとその場は素晴らしいものだろう。しかしどうしてもあなたには、自分は完全に場違いだと分かる。
「すっごく素晴らしいお誘いなんですけども、私なんかただのブティックの店員ですし、その場に行ってもヴィクトルのイメージを下げてしまうんじゃないかと思うので――」
かなり卑屈に聞こえてしまったかもしれないが、正直な思いだった。だが目の前の男性二人は瞬きをして見下ろしてくる。
