第10章 彼の同僚
「いやぁ会えてよかったな。ヴィクトルは今取引先との話し合いが延びてるんじゃないかな? でももうすぐ来ると思うよ」
「そうなんですか? 教えてくださってありがとうございます。じゃあ私は向こうで待ってますね――」
もう一度挨拶をし、きりのいいとこで去ろうとすると、建物の奥のほうからまた違う人物が現れた。
あなたは今度はしっかり足を止める。育ちのよさそうな30前後の男性で、金髪をきっちり横分けにしたクリスだ。
彼はヴィクトルの部下で以前ジムで会ったことがあり、二人で抱き合ってるところまで見られていた。
クリスは目を凝らし、まっすぐあなた達のもとに向かってきた。
「あぁ、名無しさんじゃないですか! こんばんは。大丈夫ですか? どうしたんです、この男性にまたナンパされてしまったんですか?」
「いえ! 全然違います!」
「またってなんだよクリス、お前彼女を知ってるのか?」
「そうですよ。あなたよりも先にヴィクトルに紹介されましたから」
ふふん、と鼻を鳴らしたクリスは、あなたに対してにっと笑みを作る。
「ヴィクトルはじきに来ると思いますよ。あぁでも僕が先に着いてよかったです。窓からあなたがマックスに絡まれている姿が見えましてね。こうして助けに来たんですよ」
「えっ! そうなんですか? いやなんて言えばいいのか⋯⋯ただご挨拶してただけなんですけど。なんかすみません! 皆さんのお邪魔をしてしまって!」
あなたが恐縮すると二人は大きい声で笑い始めた。クリスはスポーツマンというより知性的なエリートに見えるが、マックスの笑い方はヴィクトルを彷彿とさせる爆発的で快活なものだ。