第9章 実家にて(彼視点)
「ほう⋯⋯本当に美しい女性だな。大人っぽく見えるし落ち着いていそうだ」
「そうなんだよ、でも二人でいるときはとても愛らしいんだ。俺を頼ってくれたりもして、もちろんこちらも何度も助けられているけどな。そもそも彼女の存在自体が自分にはもったいないほどに尊くて――」
長々と惚気だす息子に父も段々と引いていた。
しかし幸せが舞い込み人が変わったようになったヴィクトルに、呆れていた父もきちんと話をする心づもりは出来たようだ。
「本当に好きなんだな。だがひとつ思ったんだが⋯⋯お前は父親のごとく好かれてるんじゃないか? ほら、そういう女性もいるかもしれないぞ。年の離れた男性ならば安心するとか、まあお前に俺みたいな包容力があるとは思えんが」
どの口が言うのだと思ったヴィクトルだが、少しひっかかる。
あなたが年上男性をわざわざ好むという可能性は、あまり考えたことがなかった。そういう自分の面も好きになってくれたのだろうか。
出会いを考えれば、余裕や経験のありそうな年上を選んだ理由は十分わかる。しかし詳しい経緯はもちろん親は愚か友人にすら言うつもりはない。
それは二人だけの大切な出来事として心に秘めた繋がりでもあるからだ。
「どうだろうな⋯⋯いや、そういえば彼女のお父さんは親父と同い年なんだよ」
「本当か? それは一見お前には安心材料かもしれないけどな⋯⋯だからこそ余計にひとしおの思いがありそうではあるか」
父はどうしても父目線で話をしている。
向こうのご両親の気持ちを慮っているのだろう。
だからこそヴィクトルもより一層気が引き締まるように感じていった。
だが、あなたが年上だから自分を好きなのかどうかについては、少しだけ心に残る疑問にもなっていた。