• テキストサイズ

美オヤジを誘って囲われて救われる話

第8章 会社にて


それは、マックスはヴィクトルとは違う方向のモテ男だが、あなたの存在をこの男にだけは知らせたくないという彼の繊細で貴重な男心だった。

「くそっ、あの坊っちゃんも代わりに俺を誘えばいいのによ。こっちだって稼いでるし金払いはいいぞ?」
「ははっ。そう言ってやれよ。彼は嫌がるかもしれないけどな」

屈託なく笑ったヴィクトルに納得のいかない同僚の目が向けられる。自分にとってはただの社交場としての使い方だったが、この男は本気まじりで女性を口説こうとするから話が合わない。

二人で仕事と関係のない軽口を叩いていた頃、新たな人物が扉から入ってきた。

禁欲的な空気さえ漂う、黒髪を後ろにきっちり流したスマートな男だ。彼は会計士で財務部長でもあるエリオという。

黒縁眼鏡も似合っているし、冷めた顔つきも中々に美男子である。

しかしヴィクトルはこの唯一ボート部ではない在学中の友人とウマが合い、気に入っていた。

「やあエリオ。おはよう」
「おはようヴィクトル。もう幹部候補の面接が終わったらしいな」
「そうなんだよ。人事部長のあいつが出張でね、代わりに任されたというわけさ」
「どうだったんだ?」
「文句なしの逸材だな。芯はしっかりしてるが素直なところもあって、俺は気に入ったよ。皆にも好かれそうだ」

二人が会話している間もマックスは場所を大きく取って座り、興味なさそうにスマホを見ている。

「ところでどうにかしてくれないか、この男。40にもなって君みたいな落ち着きがまるでないんだよ」
「またかい。どうせ二人ともくだらない話をしてたんだろう。俺に振られても困るよ」

メンバーの中でも抜きん出てお堅い会計士だが、笑い合う男二人をよそに彼はとんでもないことを口にした。

「ヴィクトル、彼女が出来たんだって? どんな子なんだ?」
「⋯⋯えっ? いきなり何を言い出すんだ。たった今くだらない話はやめろと言ったの誰だよ」
「君にとってくだらない話なのか?」

動揺したところを鋭く切り込む眼鏡の男に、ヴィクトルは喉仏を大きく動かす。全くそうではないが、この状況は想定外だった。
/ 202ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp