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【呪術廻戦】誰も知らない

第13章 私の名


食事が出来上がったので食べてもらう。
虎杖には気に入ってもらえたようだ。
八重は虎杖の食べっぷりに驚き、次回からの量を考えていた時だった。

「比丘尼、何故お前は食べない?」

それまで黙って食べていた脹相が言葉を発した。
不老不死となって以降、食べずとも死なないため食事の必要性はほぼない。
しかも八重は食事を提供する側。
席を共にするなどあってはならない。

「お前だけ食べないのは雰囲気が悪い」

なるほど、場に合わせると言うのは納得できた。
比丘尼だった時も人々と関係を持つために食を共にすることはあった。
そうこうしている内に虎杖がご飯と味噌汁をよそって持ってきてくれる。
躊躇う八重の肩に手を置き、席まで導いてくれる。

(あ、温かくなってる…)

添えられた虎杖の手は先程よりも温かい。
八重の心も少し温かくなる。
目の前の湯気をあげる味噌汁を一口飲む。
もちろん作っている時に味見はしている。
しかし、その時よりも格段に美味しい。

「…こうやって誰かと食事をするのは150年ぶりです…」

(誰かと摂る食事って、こんなに美味しかったんだ…)

忘れていた感覚が蘇ってくる。
図らずも目頭が熱くなる。
それを一瞬だけ手を目元に持っていき、グッと押さえてそれ以上を押し留める。
ご飯も食べる。
白米も甘い。
胸がとても温かい。
これでは救われているのはどちらかわからない。
その後も黙々と食事を摂っていると虎杖が普通に話しかけてくる。

「なんでこんなに味薄いのにうまいの?」

「それは、出汁をしっかり取ると味付けが少なくても美味しくなるんです」

「へー」

「悠仁くんは好物はありますか?」

「んー、丼物とか麺類とかかなー」

「では、今度作ってみますね」

「マジで?やった」

何気ない会話。
次への約束。
そんな些細なことがこの上なく尊い。
八重は心が今まで生きてきた中で一番満たされているように感じた。
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