第13章 私の名
部屋に戻るとまずは改めて自己紹介からやり直した。
簡潔にだけど脹相との関係も話して謝罪する。
すると、もういいと、もうどこかへ行けと言われる。
しかし、ここで引き下げるわけにはいかない。
「九相図を高専へ預けてからというもの、九相図の行く末を見守ることを誓って生きてまいりました。もう、あなたしか、脹相さんしかおりません」
この言葉に嘘はない。
もう二度と脹相を加茂憲倫の手にかけさせない。
そのためには是が非でも一緒にいなければ。
八重の熱意が伝わったのか、はたまたただ単に弟の為か、虎杖に温かい食事を提供することを条件に留まることを許された。
(心が少しだけ温かかった。後者かな…)
行動原理の全てが弟である脹相なので、八重はそのように結論づけた。
そのまま脹相は部屋から出ていってしまった。
あとに残されたのは八重と虎杖。
少しの間、静寂が訪れる。
気まずい空気を破るように、虎杖がぽつりと口を開く。
「……あのさ」
八重は虎杖を見た。
「さっき名前出てた壊相と血塗さ……俺が、殺したんだ」
言い終えたあと、虎杖はどこか申し訳なさそうに視線を逸らした。
八重は一瞬だけ目を瞬かせる。
そして、少しだけ難しい顔をすると、真っ直ぐ虎杖を見た。
「……それは」
ほんの僅かに首を傾げる。
「兄弟げんかで、ということでしょうか?」
「……は?」
虎杖は思わず間の抜けた声が出てしまった。
八重は至って真剣のようだ。
「え、いや……違うけど……」
虎杖は耳の下辺りを掻きながら、力が抜けたように息を吐く。
「そいつらとは敵として会ったんだ。だから…」
それだけで八重は理解したように目を伏せた。