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常磐

第10章 常盤緑



その後、順々に霜刃、南天、他の子供巫女や神職見習いの子供たちみんな、みんなに声を掛けて、親し気に笑う茅場が、ますます好きになった。

「今日は秋の収穫を寿ぐ祭りだ。勤めに励んで旨いものを鱈腹食べて行くがいい。一年で一番旨いものがある時分だ。遠慮せず、楽しむことだ」

抜けるような秋空を見上げて磊落に笑った茅場は、物凄く格好よく見えた。
紅葉がちらほらと山を彩る澄んだ空気が清々しい秋の日和、小枯は胸がはち切れそうに楽しくて仕方なかった。
普段気難しい霜刃までもが、目が合えば時折笑みを返して来るほど気が緩んでいる様子がますます楽しさに拍車をかける。それに南天。南天がいる。

「こんにちは」

他の子供巫女と話していた南天に声をかけると、南天はハッとしたように振り向いた。
細い毛の豊かに結い上げられた綺麗な髪が、緩やかな弧を描いて揺れる。薄く茶色がかった髪は、紡ぎたてを陽に晒した絹糸みたいに艶やかで綺羅綺羅しい。

南天は大きな目で小枯をじっと見て、それからちょっときょろっと目を動かして何か探すような様子を見せた。

「……?」

訝しんだ小枯に、南天は慌てたように笑みを見せた。

「こんにちは。小枯。ええと…久しぶりね?…元気だった…?」

「元気でした。雨乞いの舞のときはお世話になりました。私は…何だかあんまり覚えてないんですけれど、弐の巫女に聞きました。ありがとうございます」

言いながら、南天の目が自分の目より下にあることに気付いた。
小枯は南天の背を追い越していた。

「世話なんかなんにもしてないから。あの…あなたのお世話をしたのは霜刃じゃないかしら」

まだ落ち着きなく辺りを見ながら、南天が戸惑いがちに答えるのに小枯は首を傾げた。

「霜刃?」

確かに目が覚めたときも霜刃は傍にいた。

「でも翼殿まで連れていってくれたのはあなたでしょう?」

「それはそうだけど…」

そう言って南天はまた辺りを見回した。

誰かと待ち合わせてるのかな…。

人待ち顔にも見える落ち着きのない南天の様子に、小枯は声をかけたことを後悔した。何だか、その誰かとの時間をちょっとでも奪ってしまったような気がして、落ち着かなくなる。

「あの…、でも、ありがとう。多分、迷惑をかけてしまったしまったと思うから…」
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