第10章 常盤緑
綺麗なコだなぁと、初めて南天を見た小枯はびっくりした。
上背は小枯と同じか少し大きいくらい、華奢で柔らかそうで、何より青いように白い肌と大きな瞳が凄く綺麗だ。
時雨を使って里の人の前で舞う、それが少しばかり気ぶっせいで、でもこれは里の為になる晴れがましいことなのだからと親に言い含められたのを何とか飲み込もうと、歌を歌いながら気晴らししていたところに声をかけられた。
優しくて親しげな声で、振り向く前から綺麗な雰囲気が感じられた。
南天は小枯同様華奢だったけれど、何故かどこもかしこも柔らかそうに見えた。
骨ばって霜刃とさして変わらない体つきの自分とは大違いだ。
違い過ぎて、同じ生き物じゃないみたいに見えた。
話してみても優しくて、3つ年上だと聞いても小柄で可憐な南天はまるで年上のように思えなかった。言うことは大人びてはいても、目に入る南天は同い年か、年下みたように、守らなければならない存在に見えた。
もっと話してみたかったけれど、小枯は雨乞いの舞で時雨に削れてその後の記憶がない。目が覚めたら拝殿の一室で横になっていて、南天が翼殿に連れて来てくれたらしいことを社の巫女に聞いて知った。
「また会えますよ。祭の度に舞うことになるでしょうから。いずれは参の牟礼で会うことになるかしらね。大祭に招かれれば。あなたも南天さんも、もう巫女なんですからね。そこでまた会えますとも」
親ほどの歳の巫女に言われて不思議な気がした。この人と同じ立場になったのだとはとても思えなかった。
けれど、その巫女の言った通り、その後小枯は4年に渡って大祭で巫女として舞を舞った。
その4年目、霜刃と連れ立って初めて参の牟礼まで赴き、今度は時雨を使うこと罷りならないと告げた参の社の宮司、茅場とも知り合った。
宮司は面白い大人で、怖い大人だった。
「お前が弐の牟礼の小枯か」
一頻り値踏みするように強い目でじろじろと小枯を見た後、茅場に大きな手を頭の上に翳してきた。咄嗟に目を閉じて身を竦めた小枯の頭を、茅場はするっと撫でて声を立てて笑った。
「じゃじゃ馬娘め。表を駆けまわっているな?日に焼けて健やかなことよ」
そう言った声が朗らかで、何だか隣に立って親しく話しかけられたような温かみを感じて、小枯は茅場を好きになった。