第10章 常盤緑
素っ気なく言って袷を寛げた霜刃は、また背が伸びたようだ。
どんどん丈が高くなる。
チラチラと他所の牟礼の女ノ子が霜刃を伺っている。ここに来てからもうずっと、そう。
立ち居振る舞いが美しく、丈高い霜刃はそれだけで目立つ。顔立ちも淡白だが端整だし、狩りもしているから細身ながら締まった身体つきが着物越しにもわかる。
…そうか。霜刃は、人目を引くんだな。
そう思ったら何だか妙な気がした。
妙な気がしたら、何となく嫌な気がした。
「………?」
胸元を押さえて首を傾げたら、霜刃が背中に触れた。
「大丈夫か?腹が減ったか?喉が渇いたか?」
「止めろよ。子供じゃないんだぞ」
触れられた背中がむず痒くて顔をしかめて振り払ったら、呆れ顔をされた。
「馬鹿。俺たちはまだ子供だ。妙な虚勢を張るな」
そういう霜刃が大人びて見える。
何だか面白くない。
「私は子供じゃないぞ。霜鎌に名を連ねる大人の端くれだ」
胸を張って言ったら、霜刃はすっと目を細めた。
「…大人になるとは、そういうことではない」
「そういうお前だって私と同い年じゃないか」
「だから俺たちは子供だと言っている。早く大人とやらになりたくば、徒に背伸びするな」
チェッと舌打ちしたら、笑われた。
「子供」
「舌打ちくらい好きにさせろ」
「為所を見極めろ。ふ。間違えばより子供じみる」
「嫌な感じ」
「上等。それでよし」
「…お前が羨ましいよ」
「何故?」
「媚がないからさ」
「ーお前にはある?」
「…好かれたいと思ったりは、しないか?」
「それを媚びというかどうか、俺にはわからない。心の持ち用の話だから、俺には見えない」
「そうか…」
つい、目が南天を探した。
「あの巫女が気になるか」
見咎めた霜刃に問われ、首が竦まる。
「…うん。あの人、雨乞いのとき、私の側にいてくれた…。覚えてるか?4年前の、雨乞いのときのこと?」
「…ああ。覚えている」
霜刃が目を逸らした。
珍しい。
逸らされた目線の先に回り込むように腰を屈めて、霜刃の顔を覗き込む。