• テキストサイズ

白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第21章 ○ 合格発表と不穏な知らせ ●


 週末の緒方家では、窓から差す日差しが淡い影を落としている。
 星歌は水槽の熱帯魚に餌をやってから、緒方の隣に座った。その一連の動きを、緒方は横目でさりげなく見ていた。
 唇には、緒方が贈ったピンクの口紅。タイトなニットは彼女の体のラインをはっきりと浮かび上がらせている。スカートはいつもの私服に比べて少し短いようで、座ると膝上まで上がって太ももが覗く。今日の星歌は、明らかにいつもと違う。緒方の視線は唇から首筋へ、首筋から胸のふくらみへ、そして、ゆっくりと脚へと落ちていく。…まさか、誘っているのか?いや、あり得ない。星歌は、そんな子ではない。制服のスカートはもっと短いだろ、オレは何を動揺しているんだ…。胸の奥で、理性と欲望が静かにせめぎ合う。
 星歌がふっと息を吐いた。
「…ねえ、精次さん」
「ん?…なんだ?」
 緒方は慌てて視線を顔に戻す。星歌は少しだけ困ったような表情で呟くように言う。
「…引っ越すかもって話、聞いてくれる?」
 部屋の空気が、瞬時に変わったような気がした。
「大学の近くに女子寮があって、もしかしたら入れるかもって…先生に言われて」
 緒方は唇を噛む。…今は、歩いて10分もかからない距離に住んでいる。毎週末のように、こうして会える。それが、できなくなるのか…?
「通学がラクになるし、パパとママも、伯父さまもいいんじゃないかって…。どう思う…?」
「…通学がラクになるならいいんじゃないか?乗り換えせずに通えるほうがいいだろ?」
 緒方は言葉を必死で探した。努めて冷静に話そうと思ったのに、自分でも驚くほど唇は振るえて、荒い声が出た。
「…イヤ?」
「…こんな時間が減ると思うと、少しな…」
 声は小さくなり、少し掠れる。星歌は穏やかに微笑み、緒方の体に頭をもたれる。
「…私も、寂しい…」
 その一言が緒方の胸の奥に落ちていった。
 冬の太陽が少しずつ傾いていく。2人の影は、長く長く、重なっていた。
/ 83ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp