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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第21章 ○ 合格発表と不穏な知らせ ●


 静かな部屋に、緒方は遅くに帰宅した。ネクタイをゆるめながら、何気なくテレビのリモコンに手を伸ばす。画面が明るくなり、小さく音が鳴る。誰かが賑やかに喋っている。
 この家では1人でいることが当たり前で、それでいいと思っていた。だが、今は違う。週末に星歌が訪れるたび、1人の時間の寂しさが際立つようになった。
 ソファに深く沈み、ぼんやりと画面を見つめていると、やがてCMに切り替わった。真っ赤な口紅を引いた女優が、艶やかに微笑みながら近づいてくる。
 緒方の脳裏に、淡いピンクの唇がフッと重なった。…星歌のほうが、ずっときれいだ。あれはオレが選んだ色だ。その事実に、胸の奥が静かに疼き始める。
 高校を卒業するまでは星歌のペースを守ると誓ったが、卒業したらどうなる?…オレは、あの唇だけでなく体も全部、自分のものにしたい。ただ、無理矢理にでも星歌を自分のものにすることはできない。卒業したとしても、星歌の準備ができていないなら待つつもりだ。だが、先日の星歌の「引っ越すかも」という言葉が、胸の奥に小さな穴を開けた。
 引っ越すと言っても都内なのだから、すぐに会える。それでも、今までと大きく変わる環境に不安を覚える。大学生になったら、星歌の世界は大きく広がる。オレ以外の男と接する機会も増えるだろうし、もしかしたら、ソイツを好きになることだってあるかもしれない…。そうなる前に、オレのものにして、オレしか見えないようにしたい…。…強烈な独占欲。
 このソファで肩を抱けば、オレにもたれて身を委ねてくる。キスをすれば、うっとりと頬を赤らめる。このまま押し倒したい、その体に触れたい、そんな欲望を持つことが、この頃は多くなった。
 星歌を傷つけたくないと思う一方で、メチャクチャにしてしまいたいという想いも湧く。疲れのせいもあり、頭が混乱している…。
 心を落ち着かせるように、緒方は大きく深呼吸をした。テレビを消して寝室へ向かい、星歌を思いながらベッドへ潜りこんだ。
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