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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第21章 ○ 合格発表と不穏な知らせ ●


 星歌の大学合格が決まると、緒方は星歌を連れて、海の見える小さなフレンチレストランへ向かった。
 窓際のテーブルに座ると、星歌はワクワクとした表情で海を眺めている。
「水面がキラキラして、ローヌ川の星月夜みたいにきれい…」
「今日は星歌の合格祝いだ。おめでとう」
 緒方は目を細めて静かに言う。星歌が一緒であり運転もするため、グラスには食前酒ではなくガス入りのミネラルウォーターが注がれている。
 乾杯のあと、緒方は小さな紙袋をそっと差しだした。
「これ、キミに」
 星歌が袋を開けると、リボンをかけられたボックスの中に、コンパクトミラーと淡いピンクの口紅が1本。
「素敵…」
 星歌は頬を染めて微笑む。
「…今、着けてもいい?」
「ああ」
「じゃあ、お手洗い行ってくる」
 しばらくして星歌が戻ってくると、緒方の視線は、自然とその唇に吸い寄せられた。色は控えめだが、確かに存在感を主張している。星歌らしさを損なわずに、幼さと大人の境界を少しだけ先に進めたような危うい色気が、そこにあった。
「…どう?」
 星歌は恥ずかしそうに唇を引き結ぶ。
 緒方は言葉を選ぶように、静かに告げた。
「…とても似合っている」
「…本当?」
「ああ」
「よかった…」
 その笑顔があまりにも無防備で、緒方の胸の奥が疼く。オードブルが運ばれてきても、視線を星歌の唇から離すことができない。スープを口に運ぶたび、グラスの縁に触れるたび、淡いピンクが蠢くようで、緒方の胸の奥は少しずつ熱くなっていく。
「おいしいね、精次さん」
「…ああ」
 緒方は、視線を慌てて皿へと戻して、ふと考える。…卒業まであと3か月か…。すでに今夜、星歌を帰せなくなりそうなのに、オレはそれまで待てるのか…?…いや、ダメだ、星歌のペースを守れ。自分に言い聞かせる。
 窓の外、水面は夜景の光を反射しつつ揺らめいている。時折、波のうねりが不規則に大きくなり、まるで緒方の心の中を映しだしているようだった。
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