白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第15章 ○ 白川のアドバイスと初恋の話 ●
夕方のカフェで緒方と白川は、いつものようにカウンターの端に座っている。
白川がニヤニヤしながら唐突に切り出す。
「ねえ星歌ちゃん、初恋の人ってどんな人?アメリカの人?」
緒方の動きがピタリと止まる。
「白川、何を聞いているんだ」
「だって、緒方が気にしてるみたいだからさ〜」
「別に気にしていない」
緒方は即答したが、声が少し裏返る。
白川は何度か頷く。
「じゃあ、いいや。答えなくていいよ、星歌ちゃん」
「…白川が知りたいなら聞けばいいだろ」
「オレは別に〜」
白川は素っ気なく手を振る。
緒方は星歌を見て言う。
「…話したいなら話せばいい」
「えっ…別に話したいわけじゃ…」
星歌はカップを両手で持ったまま、困惑の表情を見せる。
白川が勢いよく手を叩いてから言う。
「オレは別に知らなくていいし、星歌ちゃんも話したいわけじゃないから、この話、終了〜!」
「…白川先生、また何か企んでますか…?」
星歌は不審そうに首を傾げながら仕事に戻り、白川はニヤニヤしながらコーヒーを飲む。緒方は内心で、オレは…本当は知りたい…と思う。何か策はないか…緒方が考えを巡らせていると、ガラス扉が押し開けられる。
「こんちは!」
入ってきたのは芦原だった。
「芦原」
「はい?」
「星歌の初恋の話、聞きたいだろ?」
芦原は一瞬きょとんとするが、すぐに笑顔になる。
「そうですね、聞きたいですよ」
緒方は、すかさずカウンターの星歌に向かって言う。
「芦原がこう言ってるぞ」
星歌はトレイを持ったまま振り返り、少し困ったような表情を見せる。
「…知りたいなら、そう言えばいいのに…」
「なんだ、緒方さんが知りたいからダシに使われただけか〜」
芦原は大袈裟に肩をすくめる。
「…ま、待て、違う」
緒方は否定するが、耳がほんのり赤くなっている。
白川は肩を小刻みに震わせて笑っている。
「そんなにおもしろい話じゃないけど、聞きたい?」
星歌はどこか嬉しそうに、イタズラっぽく緒方に尋ねた。