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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第15章 ○ 白川のアドバイスと初恋の話 ●


 都内のビアガーデンでは、緒方と白川が喉を潤している。
「碁聖獲って、碁も恋愛も絶好調だな?」
 白川の言葉に、緒方はジョッキを置いてため息をついた。
「…この前、星歌を泣かせちまった」
「え?どうした?」
 緒方は、レストランでの遭遇に雑貨店での再会、車でのイタズラと美術館での涙をかいつまんで説明した。
白川はしみじみと呟く。
「元カノか〜。傍から見てる分には若い彼女のかわいい嫉妬だけど、星歌ちゃんとしては元カノと自分を比較しちゃって、つらいんだろうな」
 少しだけ目を細めた白川が緒方の顔を見る。
「でも、あんなチャラチャラした車に他の女、よりによって元カノの香水を匂わせてる緒方が悪いな」
緒方は黙ってジョッキを傾けている。
「で、どうしたんだ?まだこじれてるのか?」
「星歌は『信じてる』と言ってくれたが…まだ不安そうに見えるな」
「女の子ってさ、過去のことって頭で分かってても心がざわつくんだよ。緒方が『何もなかった』って言っても、星歌ちゃんにとっては『でも車に乗せたでしょ?』になる。ちょっと時間が必要だな」
 緒方はジョッキに残っていたビールを飲み干してから言った。
「星歌があんなふうに嫉妬するとは思ってもいなかった」
「緒方だって、星歌ちゃんの元彼が目の前に現れて平気でいられるか?付き合う前から芦原くんに対してあんなに妬いてたのに」
「…星歌に元彼はいない」
「緒方が初めての彼氏か〜。元彼に嫉妬する緒方、見たかったな」
「…うるさい」
「星歌ちゃんの初恋ってイケメンアメリカ人かな?レオナルド・ディカプリオみたいなさ?」
「どうだろうな」
 緒方は新しいジョッキを口元に運びながら素っ気なく答えるが、目が一瞬、泳ぐ。白川はそれを見逃さず、クスクス笑う。
「ほら、気になってる!」
「…別に」
 でも、胸の奥がほんの少しチクッとする。星歌の初恋…?さすがにオレじゃないのは分かっているが…どんなヤツであっても気に入らない。
「この件はあんまり気にするな、嫉妬は相手のことが大事だからこそだよ」
「…そうだな」
 2冠棋士の心にもかすかな嫉妬が芽生える、残暑厳しい夜の出来事であった。
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