白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第12章 ● 白川のイタズラ ○
一柳は目を吊り上げて緒方に詰め寄る。
「緒方くん!星歌に何を言わせてるんだ?」
「いえ、誤解です!星歌は、ただ、その、おもちゃを…!」
予想外の展開に動揺して、緒方はしどろもどろ。その隣で白川の肩は再び震えている。
「伯父さま、見て!知恵の輪」
星歌が一柳に知恵の輪を掲げる。
「知恵の輪…?…そうか、大人のおもちゃって知恵の輪のことか…」
一柳は一応は納得したようだが、緒方をジロリと睨む。
「星歌に変な言い方させるな、次は許さないぞ?」
「いえ、あの、私ではなく…白川が…」
「そんな!誤解ですよ、一柳先生」
白川は訴えかけるような目で一柳を見る。
「白川くんが…?まァいい…。次から気をつけろよ」
「…はい」
緒方は静かに答えるが、ひそかに怒りを抱えている。…どうしてオレが怒られているんだ…?白川、覚えてろよ?
仕事中に時間ができるたび、星歌は知恵の輪に手を伸ばす。カチャカチャとあちこちに動かしていて、ついに解けるときが来た。
「やった!できた!」
その笑顔に緒方の胸もあたたかくなる。
「解けるとすごく楽しい!他のもやってみたいな。今度、大人のおもちゃ屋さん、行ってみよう?新宿だったか渋谷だったか、駅の近くに看板があったよ?」
星歌が笑顔で緒方に言う。顛末を知る数人の客がクスクスと笑いだす。
「…いや、そんなところへは行かない」
緒方はそう答えるのが精一杯であり、白川のせいで…と、内心では怒りが爆発しそうになっている。それを察したのか白川は、笑いを堪えながら軽妙に言う。
「じゃあ、お先に〜」
逃げるように帰る白川を、緒方は睨みつける。
「…知恵の輪、嫌い…?」
星歌は困ったような表情で緒方を見る。
「…いや、そういうわけではないが…この話は、またあとでにしよう」
「…うん?わかった…」
星歌は知恵の輪をエプロンのポケットに収めた。