白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】
第12章 ● 白川のイタズラ ○
夕方のカフェで白川は、星歌に小箱を差しだす。
「いいものあげるよ、大人のおもちゃ」
「大人のおもちゃ?何ですか?」
開けてみると、箱の中には銀色の知恵の輪が入っていた。
「本当だ!大人のおもちゃ!ありがとうございます」
…もしかして、大人のおもちゃって言葉の意味、知らないのか…?と、星歌の予想外の反応に白川は吹き出しそうになる。これはこれで、おもしろいことになりそうだぞと、ひそかに思う。そこへ、取材を終えた緒方が来店する。
「精次さん、大人のおもちゃ、もらったの!」
星歌が嬉しそうに報告するのを見て、白川は小刻みに肩を震わせて笑う。緒方の顔はカッと赤くなった。
「星歌、どうしたんだ?」
「白川先生にもらったの、ちょっと難しそう」
知恵の輪を見た緒方は、大人のおもちゃって、そういうことか…。妙な道具じゃなくてよかったと、安堵のため息をつく。だが、大人のおもちゃという言い方はどうしたものか…と悩むが、星歌が嬉しそうにしていることもあり、あとで教えればいいと考える。
星歌が仕事に戻ると、緒方は白川に詰め寄る。
「白川、星歌に変なこと教えるなよ…」
「ただの知恵の輪だろ?頭を使う大人のおもちゃだよ」
「…お前、星歌をからかおうとしただろ?」
「確かにからかおうとは思ったけど、星歌ちゃんの反応が意外でさ。ニューヨークでは大人のおもちゃって言葉、使わないのかな?」
「…知るか、そんなこと…」
やがて2人の前にコーヒーが置かれる。手の空いた星歌は熱心に知恵の輪を解いている。…さっきまでは「大人のおもちゃ」なんて言ってオレをドギマギさせたのに、今はあんな真剣に…と、緒方はその表情に見惚れる。
「難しいけど、大人のおもちゃっておもしろいね」
知恵の輪がなかなか解けず、星歌が声を出したそのとき、ガラス扉が押し開けられて一柳棋聖が来店した。