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白と黒のハーモニー 第二局 【ヒカルの碁・緒方精次】

第8章 ● ゲリラ豪雨 ○


 進藤は慌てたように手で口元を隠している。
 緒方は星歌に視線を戻し、静かに問う。
「着替えやタオル、あるか?」
 星歌の濡れた姿を進藤と和谷に見られたことが、胸の奥で熱く疼いている。
「Tシャツはトートに入れてきたけど…濡れちゃったと思う」
 星歌の持つトートバッグからは水がしたたり落ちている。
「車にジム用の着替えがあるから、それを使え」
 星歌をロビーの隅まで連れ、芦原に声をかけて車のキーを渡す。
「芦原、悪い。後部座席にあるジム用の荷物、取ってきてくれるか?」
「了解です。星歌ちゃん、待っててね」
 星歌はジャケットの襟元をぎゅっと掴みながら頷いた。
 緒方はハンカチを取りだして、星歌のひたいを撫でるように拭く。
「傘なかったのか。連絡くれれば駅まで迎えに行ったのに」
「…駅に着いたときは降ってなくて…。でも、歩いてたら急に降ってきちゃって…」
「タイミングが悪かったな」
「…うん…」
「教科書やノートは濡れていないか?」
「スクバは防水だから、平気だと思う」
「スクバ…?」
「…スクールバッグ…」
「その紺色のか」
「うん」
 やがて、芦原が緒方のジムバッグを持って戻ってくる。その中から緒方はTシャツとタオルを出して星歌に渡した。
「早く着替えてこい」
「…うん、精次さん、芦原さん、ありがとう」

 同じ頃、進藤と和谷は対客室で、研究会が始まるまでの間、雑談を交わしている。
「さっきの緒方先生、めっちゃ怖かったなぁ…」
「緒方先生が志水さんのこと『オレの最愛の人だ』って言ったの知ってるだろ?お前がサボってた間も、カフェでいつもラブラブだって白川先生が話してたぜ」
「囲碁ゼミナールの日も惚気てたもんなぁ…」
「え?それマジ?」
「うん、緒方先生すげぇ酔ってたんだけど、オレ1局打ってもらったら、対局中に緒方先生、『星歌ってかわいいだろ?』とか『星歌と一緒に料理するんだ』とか、ずーーーっと話してんの」
「へ〜、あの緒方先生がね〜」
「そのせいか緒方先生、簡単な死活を間違えてオレが勝っちゃったんだけど」
「じゃあ公式戦でも、志水さんの話をすればワンチャン勝てるかもな!」
 対局室では笑い声が響いていた。
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