第12章 ※イタリアの空は、君を諦めない【REBORN ディーノ】
柔らかな日の光がカーテンの隙間から差し込み、陶器の触れ合う音では目を覚ました。
視界に入ってきたのは、甲斐甲斐しくテーブルを整える二人のメイドの姿だった。
並べられているのは湯気を立てるコーヒーに、香ばしく焼けたパン、色鮮やかなフルーツ。
それも、明らかに二人分の用意だ。
(……誰か、来るのかな)
ぼんやりとした頭でそんなことを考えていると、ディーノが顔を出した。
「おはよう、。よく眠れたか?」
昨夜の悪夢と、その後に続いた自分自身の疼きを思い出し、は一瞬だけ視線を泳がせた。
「……おはようございます、ディーノさん」
「顔色が少し優れないようだが……。もしよかったら、俺と一緒に朝食をとらないか? 一人じゃ寂しいだろ?」
ディーノは押し付けがましくない柔らかな微笑みを浮かべ、向かいの椅子を引いて促した。
正直なところ、喉の奥が詰まったような感覚があり食欲はあまりなかった。
けれど、地下室で水と僅かな食事しか与えられず、男たちの欲望を飲み込むことだけを強要されていた体は、生存本能として栄養を求めていた。
「……いただきます」
フォークを取り、少しずつ口に運ぶ。
数日ぶりに味わうまともな人間の食事に自分が「モノ」ではなく「人間」として扱われている実感がじわりと湧いてくる。
ディーノは彼女が食べ終えるのを急かすことなく、世間話を交えながら穏やかな時間を共有してくれた。
食後、コーヒーを口にしたディーノが、ふと真剣な表情でを見つめた。
「まだ少し、顔色が青いままだな。……どうだろう、この後少しだけ、外の空気を吸いに行かないか? 街を少し歩くだけでも、気分転換になると思うんだ」
「街に……ですか?」
「ああ。もちろん、俺がずっと横にいる。君を怖がらせるような奴らには、影さえ踏ませないよ」
ディーノの瞳には昨夜の誓い通り、彼女に「本当のイタリア」を見せたいという純粋な願いが宿っていた。
外の世界に出る不安と、彼が隣にいてくれるという心強さ。
は少し迷った後、小さく頷いた。