第12章 ※イタリアの空は、君を諦めない【REBORN ディーノ】
「足取りを追っていくと、数日前にバーで酔い潰れて眠ってしまった女の子を、数人の男たちが連れ去るのを見たという証言が得られた」
ディーノは膝の上で固く握りしめられたの手を、そっと自分の大きな手で包み込み、瞳をまっすぐに見つめた。
その眼差しは穏やかだが、マフィアのボスとしての鋭い洞察力が光っている。
「……聞いてもいいか。辛いことを思い出させてしまうかもしれないが」
彼は言葉を選びながら、静かに問いかけた。
「君はなぜあんな地下室で鎖に繋がれ、あそこまで執拗に男たちに回されていたんだ。……奴らは君に、何を求めていた?」
その問いにの肩がびくりと跳ねる。
脳裏にあの男たちの下卑た笑い声と、無理やり割り開かれた肢体の感覚が蘇った。
「……ボスの、女になれって」
掠れた声で、は途切れ途切れに話し始めた。
「あいつらのボスの、側室……。マフィアの女として頷けば、丁重に扱うと言われました。でも、私は……あんな奴らの言いなりになるなんて、死んでも嫌だったから」
ディーノの眉が、痛ましそうに跳ね上がる。
「断ったら……頷くまで地下で部下に回せって。毎日、何人も……。あんなに好きだったイタリア語が、あいつらの罵倒を聞くためだけの道具になって……本当に、怖かった」
口に出すと地下室の冷たい空気や、肌を蹂躙した男たちの感触が鮮明にフラッシュバックし、喉の奥が震えた。
「……すまない」
絞り出すような、掠れた声だった。
ディーノは痛ましさに眉を深く寄せ、まるで自分自身がその大罪を犯したかのような顔で俯いた。
彼の大きな掌が震えるの両手を包み込み、その温もりを分け与えるように力を込める。
「同じマフィアを名乗る連中が、君にそんな……地獄のような思いをさせた。俺たちの世界の薄汚れた論理が、君の尊厳を無残に踏みにじったんだ。弁明の余地もない。本当に、申し訳ない」
彼は一瞬、言葉を詰まらせた。
それから祈るような、あるいは固い誓いを立てるような真摯な眼差しで、まっすぐにを射抜いた。
「……イタリアを、嫌いにならないでほしいんだ」
その言葉は、静かな寝室に波紋のように広がった。