第17章 いい子 ※
相手に微塵も期待を持たせないキッパリとした断り方。
俺という存在を真っ向から見せつけて、入り込む隙などどこにもないのだと圧をかけるナマエの言動は、正直 心底意外だった。
「じゃあ、今日からお友達ですね、加茂さん!」
「……可能ならば、私のことは憲紀と呼んではくれないか」
そう言った加茂さんは、ナマエが離したはずの距離を埋めるように一歩踏み出す。
(……何だこの人。フラれたばっかのくせに図々しいな)
呆れを通り越して感心すら覚えたが、許す気はない。
俺はナマエの服の裾を強く引き、詰められた距離を倍以上にして離してやった。
「ダメです」
「……なぜ君が答える」
「嫌なんで」
ベッドに腰掛けたまま下から睨みあげるように加茂さんと視線を合わせていると、間にナマエの背中が映り込んで、俺は小さく息を吐いた。
「"加茂さん"、恵くんはまだ傷が痛んで機嫌が悪いみたいです!今日はお暇してください!」
「……それはすまないことをした。後ほど詫びの品を───」
「加茂さんが1番大怪我してるんですから、安静にしなきゃですよ!」
ナマエはにこやかに会話を続けながら、加茂さんの背中をグイグイと押し、半ば強制的に部屋の外へと送り出していく。
そして「明日の個人戦、お互い頑張りましょうね!」と明るく手を振って扉を閉めると、ナマエは何事もなかったかのような顔で俺と釘崎の元へ戻ってきた。
「最後のは余計だった。あれだとめんどくせぇ虫は簡単に払えねえぞ」
「じゃあ、何度でも払うよ」
「………」
最大限の忠告も、ナマエの忠誠心の前ではただの嫉妬心にすり替えられる。
しかしその言葉にどうしようもなく満足している自分がいるのだから、本当に俺は救えない。
「意外ね。受け取った上で、遠回しに断ると思ったわ」
「受け取らないよ。………私、恵くん以外要らないもん」
「……私、コレ卒業まで見せつけられるわけ?」
ピザを食いすぎたのか、俺とナマエを交互に見た釘崎は、ひどい胃もたれでも起こしたような表情で呟いた。
それを見たナマエは何故か嬉しげに微笑み、「特等席だね?」と彼女の頬を指先で突いて揶揄った。