第17章 いい子 ※
虎杖は少年院で死ぬ直前、俺と虎杖それぞれの真実が間違ってないと言った。
ただ、それは裏を返せば互いが間違っているということになる。
その矛盾をそのまま口にすれば、釘崎から「答えがない問題だってあんでしょ。考えすぎ」と至極まっとうな正論を突きつけられ、俺は小さく頷いた。
「……そうだ。答えなんかない。あとは自分が納得出来るかどうかだ」
我を通さずして、納得なんてできるわけが無い。
そして弱い呪術師は────我を通すことは叶わない。
だから。
「俺も強くなる。すぐ追い越すぞ」
「ハハッ、相変わらずだな!」
「私抜きで話進めてんじゃねーよ」
俺の決意にそれぞれ言葉を返した虎杖と釘崎。
その傍らで対称的に黙りこくったナマエに目をやると、ナマエは膝の上に置いた拳を微かに震わせ、思い詰めた表情でその拳を見つめていた。
(……また、余計なこと考えてんな)
何を思ってるのかまでは分からないが、暗い感情に飲み込まれそうなナマエを繋ぎ止めるべく、俺は柔らかな髪に手を伸ばす。
そして指先が触れようとした刹那。
視界の端に、見覚えのある忌々しいパイナップル頭がヌッと現れた。
「それでこそ、ブラザーの友達だな」
「!!!」
全員が凍りついたように沈黙する中、東堂の姿を捉えた虎杖だけが、脱兎のごとく窓から飛び出した。
「どこへ行く!!ブラザー!!!」
「感謝はしてる!!でも勘弁してくれ!!あの時 俺は正気じゃなかった!!!」
「何を言っている!!ブラザーは中学の時からあんな感じだ!!」
「俺とお前は同中じゃねえ!!!」
虎杖の必死の抵抗も虚しく、東堂はその超人的な身体能力をフルに発揮しながら虎杖を追いかけるべく部屋から出て行った。