第17章 いい子 ※
困り眉でピザの箱を持ったままの虎杖くんが何だか愛らしくて、ふと微笑んで手招きをすると、彼はおずおずと部屋の中へと入ってきた。
「邪魔してゴメン………」
私の隣の椅子に腰掛けた虎杖くんは、ほんのり赤らんだ頬を掻きながら視線を下へ下へと落としていく。
「……?なんのこと?」
意識的に私を見ないようにしているのか、必死に視線を泳がせているその仕草が不思議で、私は首を傾げて問いかけた。
けれど、虎杖くんは「いや、その……首の……」と、煮え切らない言葉を漏らすばかり。
「よく分かんないけど、全然邪魔じゃなかったし、恵くんも喜んでると思うよ。だから気にしないでね」
「ッス…………アリガト」
なるべく柔らかい声音を作ってあやす様に呟けば、虎杖くんは俯いたまま小さく頷いた。
「はぁ……ったく、コレのどこがいいんだか」
そんな独り言を零しながら。
恵くんとの言い合いを終えた野薔薇ちゃんは、ベッドを挟んで私の向かい側にある椅子にどっしりと腰を下ろす。
そして虎杖くんの膝の上にあるピザの箱を指さすと、ぶっきらぼうに口を開いた。
「いい加減ピザ食べるわよ。冷める」
「いや……デリに時間かかってっから、もう冷めてると思うよ」
「だから!!これ以上冷める前に食べんの!!」
声を荒らげてそう言った野薔薇ちゃんは、「ホント、どいつもこいつも察しが悪くて嫌になるわ」と毒づいて、窓の方へとそっぽを向いた。
「野薔薇ちゃん、そんなにお腹すいてるの?」
「ん、」
「そっか。ごめんね、待たせちゃって」
普段からよく怒りがちな野薔薇ちゃんだけど、お腹が減っている時は特にその沸点が低くなる……気がする。
色々と気を遣わせてしまったみたいだし、と謝罪を添えれば、野薔薇ちゃんは口を尖らせたまま、「……別に」と、渋々といった様子で許してくれた。