第16章 運命的な再開
何度も、何度も、優しく唇が重なり合う。
その無言の要求に応えるように軽く口を開けば、「待ってました」と言わんばかりに恵くんの舌が口内へと侵入して、私の舌を絡めとった。
「っ、……ちゅ、……は、っ」
「んんっ……ぅ、ふぁ……」
柔らかな唇は いつもの感触。熱い舌は いつもの体温。
大好きで、大切で、片時も忘れたくない。
例え誰に上書きされたとしても。
私は何度でも、何度だって、この体温を求めてしまうだろう。……なんて、そんなロマンチックなことを考えてしまう。
「めっ、……み、くんっ…、…待っ……んぅ、」
「ナマエ……っ、」
呼吸の合間に、切なげな声音で思考に蓋をされてしまえば、もう抗う術なんてなくて。
すぐ近くにパンダ先輩がいるかもとか、誰かに見られてしまうかもとか、そんなことどうでも良くて。
────今はただ、この甘くて激しい救済に、身を委ねたいと思ってしまった。
「っ………はぁっ、クソ、マジでムカつく」
「……ッ」
不意に唇が離れ、私の肩口に額を預けた恵くんが、吐き捨てるように呟く。
それはきっと、私に対して言っているわけじゃない。
そう分かっていても、私の隙と弱さのせいで"あの人"を抵抗できなかった事実は消えなくて、身体がビクリと硬直した。
「ごめんなさい……っ」
震える声で謝罪の言葉を口にすると、恵くんは「……お前には言ってねぇよ」と、どこか不機嫌そうに呟いた。
そう言われても私の内に巣食う罪悪感が消えるわけもなくて、唇への不快感がぶり返し、黙って恵くんの体内に根を張る木を見つめていた。
すると、私の肩に乗せられた恵くんの額が、縋るように擦り寄せられる。
「…………今は、俺の事だけ考えててくれ」
そして零された一言は、切実な願いのようで。
「……頼む、ナマエ」
心から祈るように懇願されてしまえば、最初から選ぶつもりもなかった"拒絶"という選択肢が、更に霞んで、消えていった。