第16章 運命的な再開
「………私はまだ、恵くんのものでいていいの?」
風が葉を揺らす音に紛れて、小さな声で問いかける。
すると恵くんは呆れたように息を吐き、私の肩に預けていた額をゆっくりと離して顔を上げた。
「……このタイミングで何言ってんだ。他の奴モンになるとか、許すわけねぇだろ」
「……っ」
口を尖らせて拗ねたように吐き捨てられる。
ほんのり色付いた頬を隠すように顔を背けられると、今度は赤く染った耳が顕になって、自然と笑みが零れた。
「…………好き」
「……ん、」
「何よりも、誰よりも、大好きだから……っ」
許して、なんて言えない。
だけどこの想いだけは嘘偽りのないことを伝えたくて、今度は私の方から恵くんの肩に額を預け、縋るようにその想いを告げた。
「何と、誰と比べてんだよ。……俺の事だけ考えてろっつったろ」
「ごめっ……、」
拗ねたような声音に反射的に謝罪の言葉が口にすると、私の頭に乗せられた大きな手が、私の髪をするりと梳くように撫でる。
それがどうしよもなく心地よくて、愛おしくて。
「………恵くん。ずっと、離さないで」
心の中で呟いたはずの懇願は、気づけば声になって漏れていた。
「ほんと、馬鹿だな」
そう言った恵くんは私の肩を押し戻して少しだけ身体を離すと、またこつんと私の額に自分のそれを重ね、深く目を閉じた。
「……今更、離すつもりねぇよ」
「っ…………、」
至近距離で長い睫毛が細かく震えていて、その仕草に、心臓が甘く、きゅっと縮んだ。
好き、大好き、愛してる。
ありふれた言葉だけでは到底収まりきらないほどに、私は恵くんを想ってる。
「………硝子さんのとこ、行かなきゃ」
こうして寄り添い合っている間にも、恵くんの身体に植え付けられた根は、微かに残った呪力をも吸って成長を続けている。
一刻も早く、硝子さんに診てもらわなきゃいけないのに。
「……もう少しくらい、平気だ」
恵くんにそう言われてしまえば、私が我慢する必要もなくて。
私たちはそのまましばらく、互いの鼓動と存在を確かめ合うように、静かに目を閉じて重なり合っていた。