第16章 運命的な再開
引き寄せられるまま、こつん、と額同士が触れ合った。
「俺の目、ちゃんと見ろ」
お互いの吐息が混じり合うほどの至近距離で、恵くんと視線が絡まる。
さっきの偽者とは違う、純粋で優しい声音を聞けば、強張っていた身体から毒が抜けていくように力が抜けた。
「恵、くん……」
「……大丈夫だから、落ち着け」
両頬を大きな手で包み込まれ、堪えていた涙が目の縁からぽろりと溢れ落ちると、それを拭うように恵くんの親指が私の頬を優しく滑った。
その行動にどうしようも無い安堵を感じると同時に、罪悪感の質が増していく。
(…………私、まだ恵くんのものでいていいの……?)
それを確かめるように、震える手を伸ばして彼の身体を抱きしめようとした。
だけど指先が触れたのは制服の質感でも肌の温もりでもなくて、何処か無機質な、硬い物の感触だった。
「……?」
不思議に思って視線を恵くんの腹部へ移すと、そこには彼の身体に寄生するように、木の根が深く植え付けられている。
「……!!これ、身体っ、怪我…!?」
慌てて恵くんの顔を見あげると、恵くんは「それも含めて大丈夫だ」と、痛々しい表情のまま浅く息を吐いた。
やっぱり、高専に乗り込んできた呪詛師はあの人だけじゃなかったんだ。
それに、呪術も使っていないのに、恵くんの呪力が木の根に吸われるように徐々に減っている。
「はやく硝子さんのとこ行かなきゃ……!!」
私がもっと早く、異変に気づいていれば。
そしたら恵くんをこんな目に合わせずに済んだかもしれないのに。
そんな後悔に苛まれながら、恵くんを支えて立ち上がろうとした、その瞬間だった。
(…………え、)
重なり合った視線の先で、不意に柔らかい感触が唇を塞いだ。
驚きで瞬きすら忘れ、ただ至近距離にある恵くんの伏せられた長い睫毛を見つめていると、触れていた唇が一度離れ、再び優しく塞がれた。