第16章 運命的な再開
空を見上げていた委員長は、そこにあったはずの五条さんの姿が見えなくなったのを確認すると、どこかホッとしたように息を吐いた。
「……仕方ない。僕はもう退散するけど、苧環さんのことはまだ諦めてないから。────肝に銘じておけよ、伏黒恵」
「ッ……待て!!!」
「またね、苧環さん。僕が必ず、君を迎えに来るから」
そう言って、彼は慈愛に満ちながら狂気を孕んだ瞳を細め、地面に座り込む私を見下ろして微笑んだ。
私はただ、その瞳を見上げることしか出来なくて。
結局、去っていく彼を引き止める言葉も、その行いを断罪するような言葉も、何ひとつ絞り出すことはできなかった。
「……パンダ先輩、降ろしてください」
「いいけど、暴れんなよ」
誰に見せる顔もなくて俯く私に、重い足音を引きずりながら、誰かが近づいてくる気配がした。
……それが誰か、なんて、考えるまでもなかった。
「ごめっ、ごめんなさっ、……私っ、」
「………ナマエ」
顔を隠す私の腕に、大好きな指の体温が灯る。
目が見えなくたって、耳が聞こえなくなったって、その触れ方ひとつで誰なのか分かってしまうほど、私は"彼"のことがどうしようもなく好きなのに。
「ごめん……なさいっ、」
私は恵くんだけのものだったのに、よりにもよって彼の目の前で奪われてしまった。
こんな私は、まだ恵くんのものでいられるのだろうか。
(もしそれが叶わなくなったら、恵くんはもう、私のものじゃ─────)
肺が凍ったように冷たくなって、地面に突いた腕が震えて、乾いた土に涙の跡が次々と染み込んでいく。
どうすれば、私はもう一度 恵くんのものとして受け入れてもらえるだろうか。
そんな唯一の願いの行先に思考が囚われ始めた時。
「っ、ナマエ!」
「………っ」
真っ黒な思考を遮るように、両頬が大きな手で包み込まれ、優しく顔を掬いあげられる。
そして真っ直ぐな紺色の瞳と視線が絡み合うと、苦しかったはずの呼吸が、少しだけ楽になった。