第16章 運命的な再開
「ッ……願い、って…、何…っ?」
頬にまとわりつく指を必死に剥がし、委員長の肩を押して問いかけた。
私にできることなら何でもしてあげたい。
彼を壊したのが私なら、どんな償いでも受け入れる。
この時の私は、本気でそう思っていた。
「簡単なことさ。君にしかできなくて、君になら出来ること」
けれど、彼が望んでいたのは、私が私である限り絶対に不可能なことだった。
「僕を君の一番にしてよ…!!伏黒恵のことなんて綺麗さっぱり忘れて、僕だけを見て、僕のことだけを想ってほしいんだ!!」
「っ…、」
恵くんを忘れることなんて、私にできるはずがない。
だって私はもう恵くんのもので、恵くんもまた、私のもので居てくれる。
それに恵くんの熱が染み付きすぎたこの身体で、彼を忘れて生きることなんて、到底できやしない。
「……でき、ない」
「え?」
「それは出来ないです、……ごめんなさい」
目を伏せて、頭を下げて。
私の精一杯の謝罪を受け入れてほしくて、その場に膝をつこうとした瞬間。
心底呆れたような、深い失望を孕んだ溜息が吐き出され、胸の奥がキュッと締め付けられるような痛みに、反射的に顔を上げる。
「ッでも、それ以外のことなら───!!」
「それ以外なんて要らない。君の一番以外、必要ない」
また、私の言葉は遮られた。
彼の瞳にはもう、私との対話に期待する光は宿っていなくて、そこにはただ暗く、濁った執着の影があるだけ。
そしてそれは、私が彼を説得することが出来ないと思い知るには十分だった。
「君が"出来ない"って言うなら、僕がそうさせてあげるよ」
「え………っ」
また撫でるように顎を掬われて、彼の顔が躊躇なく迫ってくる。
拒否しなければ。突き飛ばさなければ。
そう頭では理解しているのに、与えられた罪悪感のせいか、身体が鉛のように動かない。
(………誰か、助けて)
そう思った瞬間。
「ナマエ!!!」
大好きな声音が鼓膜を震わせる。
それと同時に、私の唇は少し荒れた"誰か"の感触に塞がれ、その隙間からぬるりと生暖かい異物が強引に割り込んできた。