第16章 運命的な再開
私のせいで彼が堕ちたのなら。私が、この手で彼を救い出さなければならない。
溢れ出した使命感に、私は顎に添えられた彼の手首を掴み、震えた声音で説得を試みる。
「……私、学長に掛け合って、貴方を高専に迎えるように言ってみる。だからっ、」
「ああ、そういうのはいいや」
必死に手繰り寄せた提案すらも、彼の心には届かなかったらしい。
言葉を被せるように拒否をされてしまえば、私の思考は真っ黒になって、これ以上どんな言葉を尽くせば彼を繋ぎ止められるのか、もう分からない。
「だってココ、伏黒恵も居るでしょ?」
確信めいた彼を見上げたその背後で、空が部分的に濁っていくのが見えた。
(帳が、降りてる………)
恐らく、高専関係者が降ろしたものではないだろう。
交流会が開催されるこのエリアは、学生しか居ない。
もし委員長以外に呪詛師が紛れ込んでいたら────誰かが、死んでしまうかもしれない。
「僕、アイツのこと嫌いなんだよね。アイツのせいで、苧環さんは僕から離れていったから」
「っ……」
恵くんは悪くない。
あの時の責任は、貴方の人生を狂わせた私だけにある。
そう言って恵くんの弁明をしたいのに、それを察したように頬を潰されてしまえば、ただ屈辱的に口を閉じることしか出来なくなった。
「でもね、心底憎くて、心底嫌悪しているのに、何故かアイツに成りたいと思うんだよ」
「ングッ……ゥ、」
「………いや、違うね。僕はアイツに成りたいんじゃない。アイツの、立場が欲しい」
彼が言葉を吐く度に、私の頬を潰す手に力が籠っていく。
「ねぇ、苧環さん。僕の願いを叶えてよ。そしたら僕は、君の言う通り呪術師として人を助けるよ」
目を細めて口角を釣り上げる彼の顔が、また至近距離まで近づいてくる。
ツンと鼻の先が触れ合い、彼の生暖かい吐息が肌に触れる。
生理的な嫌悪感で喉の奥がひくついたけれど、彼に「責任を取れ」と突きつけられた私は、ただ真っ直ぐに見つめ返すことしかできなかった。