第16章 運命的な再開
二年前。
雨音が響く保健室で、私を好きだと、愛していると狂ったように叫んだあの声が、脳裏の奥で鼓膜を揺らした。
「い……っ委員長……、」
「呪術師の学校だとは聞いてたけど、まさか本当にキミが居るなんて。運命的だね」
少し伸びた身長に、以前より低くなった声音。
けれど、何ひとつ変わっていないのは──私を見つめる時に浮かべる、その不器用な笑顔。
「なんで……高専に、」
「なんで?……ああ、それは僕が、"何者になったのか"を聞きたいってこと?」
楽しげに声を弾ませる彼が、距離を取った私を追い詰めるように、また一歩近づいてくる。
その口から語られるであろう事実に、私はもう、心のどこかで気づいてしまっていた。
耳を塞いで、この場から逃げ出したい。だけど、これは私が招いた、私が受け止めなければならない現実。
「僕はね───呪詛師になったんだよ、苧環さん」
「っ……」
分かっていた。
それ以外に、彼がここに立っている理由は有り得ないと。
ただ、天元様の結界が完全に機能していない今、彼が何らかの形で高専側に関わっているという、小さな可能性に縋りたかった。
「あの日、君の全てを理解出来なかったせいで……。僕は、忌まわしい呪詛師になっちゃったんだよ」
「………」
「ただ君が好きで、君を心から愛していただけなのに」
その呪いのような愛の告白に耐えきれず俯くと、視界の端の地面に、彼の靴が静かに入り込んできた。
彼が狂ったのは私のせい。それは二年前から何も変わらない、揺るぎようのない事実。
私は恵くんという光に その影を掠められていただけで、事実は変わらない。
あの時、私ひとりが救われて幸せを享受してしまったせいで……彼は、人知れず闇へと堕ちてしまっていた。
「───ねえ、責任、とってよ」
「っ……」
再び強引に顎を掬われ、逃げ場のない距離で視線を絡め取られる。
その手を振り払って逃げなければいけないと分かっているのに、それをするのは不誠実だと、私の心が叫んでいた。