第16章 運命的な再開
野薔薇ちゃんと入れ替わるように、私は箱へと歩み寄り、虎杖くんの服の裾を震える指先で摘んだ。
「……二度と、勝手に死なないで。……お願いだから」
彼の命は彼のモノ。
そんなことは痛いほど分かってる。
けれど、私の知らない場所で、大切な人が理不尽に消えてしまう絶望を、私はもう二度と味わいたくない。
「……ゴメン。五条先生に黙ってろって言われてさ」
「ん………」
真っ直ぐな瞳で謝られてしまえば、それ以上責める言葉なんて見つからない。
溢れそうになる涙を堪えながら、私はただ、虎杖くんの優しさが滲み溢れる目を、ジッと見つめ返すことしか出来なかった。
「苧環、人が死ぬと寝込むって聞いてたから心配だったんだよ。……伏黒が居るから大丈夫だとは思ってたけど」
頬を掻きながらそう言った虎杖くんは、私の背後に立つ恵くんへと視線をやり、力なく笑みを零した。
「まあ、二日前まで引きこもってたけどな」
「それは言わなくていいでしょ…!」
恵くんから放たれた余計な一言に顔を赤くして反論すると、虎杖くんはまた「ごめん……ほんっと、ごめん……」と呪文のように呟き始めてしまった。
「謝るなら最初からするなよ」
「……ソレ、宿儺に言ってくんない…?」
いつか見た、他愛の無いやりとりに笑みが零れる。
……でも、懐かしい日常が唐突に帰ってくると、この日常を手放すことへの恐怖が また一段と深く、私の心を蝕んでいく。
「───……」
「……!!」
その存在を確かめるように虎杖くんの頬に指先を添えれば、そこから伝わる確かな体温に、胸のつかえが少しだけ取れた気がした。
───あの時、貴方を救えずに絶望の淵に立たされた時。
指先に残された あの凍りつくような冷たさは、もうどこにもない。
彼が今、私たちの目の前で生きている実感を、私は指先から心へと深く刻み込んだ。